天才的な頭脳を誇る脳科学者の御手洗潔。御手洗の友人で推理作家の石岡は、難事件を好む御手洗の解決した事件をもとに小説を書いているのですが、石岡に早く新作を執筆してほしい出版社の担当編集者・小川みゆき(広瀬アリス)は、ネタを集めるために御手洗をせっつくしかありません。
ある日、御手洗はみゆきが持参した未解決事件の資料の中から“死体島”という見出しの記事に目を留めます。この半年間に、6体もの死体が海岸で発見されたという瀬戸内海の興居島。みゆきと共に島へと向かった御手洗は、その事件を調べつつ、広島県福山市で相次いで発生した外国人女性変死事件と不可解な誘拐殺人事件にも遭遇。
その地の伝説の生物“水竜”の目撃騒動も発生し、御手洗は水竜を水族館に展示したいと語る化学工業社の社長・槙田(吉田栄作)に話を聞きます。
一方、福山市立大学准教授の滝沢加奈子(石田ひかり)は、近年発見された福山藩主・阿部正弘に関する新資料の古文書に記されていた“星籠”について調べ始めた頃から、身の回りで不穏な出来事が起こるようになり、ある日の帰宅途中、東南アジア系外国人集団に襲われてしまいます。幸い加奈子は無事でしたが、御手洗とみゆきは星籠の謎までも追うことに。
御手洗の超人的な推理により、一見何の関連もないように見えるこれらの出来事が、実はさまざまな人間関係によって複雑に絡み合っていることが分かってきます。その奥に潜む容疑者とは誰なのか? 事件の真相と、幕末の歴史に隠された星籠の謎の答えとは……?
今年、市制施行100周年を迎える広島県福山市が舞台となっている本作。また、壇ノ浦の戦いや秀吉の朝鮮侵攻といった歴史的大事件の舞台であり、「崖の上のポニョ」や「ウルヴァリン:SAMURAI」などの舞台としても注目された美しい瀬戸内海・鞆の浦でもロケが敢行されました。
監督は、多くの映画やTVドラマを手掛け、近年では「相棒」シリーズが大ヒットとなった、娯楽大作の巨匠・和泉聖治さん。魅力的な天才探偵が主人公の「探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海」は、先の読めない複雑なミステリーと人間ドラマに引きつけられる、ビッグスケールの傑作映画です。
文/清水久美子