2017年12月2日(土)、12月3日(日)に東京ミッドタウンで開催された、自分らしく輝きたいと願うワーキングウーマンのためのイベント「WOMAN EXPO TOKYO2017 Winter」。3日には「今、働く女性が知っておきたい世界の『常識』」と題し、池上彰さんと増田ユリヤさんによるトークセッションが行われました。日本を代表するジャーナリスト二人が見る、世界の選挙とは?

 一国主義を主張するトランプ大統領が誕生したアメリカ、離脱の動きが相次ぐEU、カタルーニャの独立に揺れるスペインなど、世界は今、激動の時代を迎えています。本セッションは、ヨーロッパ各国を取材してきた増田さんのレポートを軸に、池上さんがその意義を解説する、という形で行われました。

日経WOMAN連載「壁ドン! 世界史入門」での二人の解説は人気
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独立運動に揺れるスペイン

池上 2017年、アメリカでは一国主義を掲げるトランプ大統領が誕生し、フランスではEU不要論を唱える極右政党と決選投票の結果、EUは必要だと主張するマクロン大統領が勝利しました。

 世界では今、「自分さえよければいい」という動きと、「いや、みんなで一緒にやっていかなければならない」という両方の動きがありますよね。増田さんは最近、ヨーロッパ各国を取材されていましたが、現地の様子はいかがでしたか?

増田 バルセロナがあるスペインのカタルーニャ州では、カタルーニャ独立をめぐって住民投票が行われました。独立派が勝ちましたけど、街の人々はどう捉えているのかが気になって取材してきたんです。

 街を歩いていると、集合住宅のベランダに旗が出ていました。独立派の人は、「カタルーニャ独立の旗」と呼ばれる旗を掲げるんですが、2年前に訪れたときに比べると、ずいぶん減った印象でした。

池上 「Si」と書かれているのは、独立に対して「yes」という意味ですね。日本では自分の主義主張を旗で示すなんて、ありえないですよね。

増田 バルセロナのサグラダファミリアで現地の人々に取材したところ、観光客が激減し、売り上げが半分以下になってしまったと言っていました。今まで認められていた自治の部分も絞めつけにあっている、と。

池上 スペインの首相がカタルーニャの独立に猛反対していて、締めつけを強化しているんですよね。「独立するなら、これまで認めていた自治権も取りあげるぞ」と。住民投票の結果も憲法違反だとして認めていません。

増田 はい。でも、運動も下火になってきて、現地の人にとって独立はありえない状況のようです。

池上 カタルーニャは無理やりスペインに併合されたという歴史があります。もともと言葉も違いますし、自分たちは別の国だという思いがあるんですよね。

 それに、バルセロナは観光地もあるのでスペイン国内でも経済状況がいい。それなのに、自分たちの税金はよその貧しい地方に使われ、我々のために使われていないではないかという不満がある。そこから、独立運動に火がついたんですね。歴史的な独立意識と最近の経済状況があいまって独立運動が盛り上がった、というわけです。

増田 12月21日の州議会選挙でスペインからの独立を主張する政党が合計で過半数を獲得、先行きは改めて混沌としています。