妊活には自分の心身と向き合ったライフプランが必要

 続いて登壇したのは、順天堂大学産婦人科学講座特任教授の竹田省さん。「妊活の心と体づくり―心と体を知ってライフプランを!―」をテーマにお話いただきました。

順天堂大学産婦人科学講座特任教授の竹田省さん
順天堂大学産婦人科学講座特任教授の竹田省さん

 女性が「赤ちゃんが欲しい」と思ったとき、心身の健康とライフプランは切っても切れない関係にあります。ところが、女性の社会進出が進むにつれ、「晩婚化」「晩産化」「少子化」が増え、「順調なライフプラン」が立てづらくなっているのです。

 「2015年の女性の平均初婚年齢は29.4歳、平均初産年齢は30.4歳でしたが、都会ではもっと年齢が高くなっています。将来的には『高齢出産』である35歳以上で出産する人が、半数近くになるでしょう。一方で不妊治療は卵子・卵巣の凍結技術の発達、無精子症の治療、海外では子宮移植による妊娠も可能になるなど、どんどん進化しています。50代以上で出産する女性も年間数十人はおり、私も54歳の女性を担当したことがあります」(竹田さん)

 医学の進歩により、年齢を重ねても出産できる人が増えているのは喜ばしいことではありますが、いくら技術が進歩しても20、30代に比べて出産率ががくんと減ることは変わりませんし、高齢出産は母体も赤ちゃんもさまざまなリスクが高まります。

 「年を重ねるにつれ、女性ホルモンのエストロゲンに依存した疾病である子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などになる女性が多くなります。これらは不妊の要因にもなりますので、『年齢による卵子の老化』と『自身の疾病』という不妊のリスクを二つ抱えることに。また、妊娠したとしても高血圧や糖尿病などの合併症、前置胎盤や早期胎盤剥離になる確率も高いのです。危険を伴う分娩では帝王切開率も上昇します」(竹田さん)

 一昔前は20代で出産する女性も多かったことから、悪化した子宮内膜症や子宮筋腫などを抱えている例は多くなかったといいます。

 「妊娠・出産をすると黄体ホルモンが大量に分泌されます。この量は、子宮内膜症や子宮筋腫の治療薬である黄体ホルモン製剤の約50倍の効果があることから、妊娠・出産がこうした病気の一種の治療の役割を果たしていました。ところが今は高齢で妊娠・出産する人が多いことから、子宮内膜症や子宮筋腫が悪化した中でのお産が増えています」(竹田さん)

 例えば子宮筋腫の場合、妊娠を望むケースでは子宮を温存しての手術が可能です。竹田さんが担当した患者さんでは、31歳の未婚女性で、合計10kgもの筋腫を切除したケースもあったそうです。ただ、子宮にメスを入れると、その後のお産は帝王切開になる確率が高くなります。

 「晩産化が進む現代の女性は、『産みたい』と思った時に健康状態が万全ではない可能性があります。子宮内膜症などの婦人科系の病気、高血圧、糖尿病などの疾病がある場合は、妊娠前に治療しておくのがベスト。産みたいと思った時にすぐに妊活できるよう、早めに産婦人科で治療の相談をしてください。セカンドオピニオン外来もありますので、自分の納得する治療方法を探すこともできます」(竹田さん)