腸内細菌を整えるカギは「プレバイオティクス」

 では、腸内細菌の多様性を上げるには、どうすればいいのでしょうか。小林さんによると、最も重要なのは「食」で、腸内細菌たちのエサとなる「プレバイオティクス」をとることが、腸を整えるカギだといいます。

 「普段から『オリゴ糖』(ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖など)や『水溶性食物繊維』などの『プレバイオティクス』をとることを意識してください。食物繊維には、便を柔らかくしてカサを増やし、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にする『不溶性食物繊維』と、腸内細菌たちのエサになる役割を果たしてくれる『水溶性食物繊維』があります。後者をたくさん含む食材は意外に少ないので注意が必要です」(小林さん)

 また、腸内細菌が水溶性食物繊維を食べると、「短鎖脂肪酸」というものがつくられ、この「短鎖脂肪酸」が、腸粘膜のエネルギー源となったり、自律神経系を通して脳に働きかけ、食欲が出過ぎたりするのを抑えてくれるとのこと。

 「短鎖脂肪酸をしっかりとつくるためにも、水溶性食物繊維は意識してとらねばなりません。水溶性食物繊維は、納豆などのネバネバした食品や、キウイなどのフルーツ、穀類ではもち麦(大麦)などに豊富に入っています」(小林さん)

 健やかで美しい「健美腸」のポイントは、水溶性食物繊維をこまめに摂取すること。そうすれば、短鎖脂肪酸が不足せず、腸の元気が保たれて、ひいては全身の細胞の機能を高く保つことにもつながるようです。

さらに一歩進んで「シンバイオティクス」を!

 一方、オリゴ糖や水溶性食物繊維などの「プレバイオティクス」と一緒に、ヨーグルトや漬物などの発酵食品(=プロバイオティクス)も一緒にとることがオススメです」と、小林さん。

 「プレバイオティクスとプロバイオティクスを一緒にとることを『シンバイオティクス』といいますが、この『シンバイオティクス』を実践することで、腸の健康を守り、体本来の力を強める機能が高まります」(小林さん)

 朝食のヨーグルトにキウイなどのフルーツを一緒に入れたり、味噌汁と一緒に水溶性食物繊維を含むサプリメントを取るのも一つの手。まずは、普段の生活の中でできることから始めていきましょう。

 「その他、健美腸のためにはエクササイズも欠かせません。15分~20分のウオーキングを習慣にしたり、ヨガなどで呼吸を深くして自律神経を整えるのもオススメです。腸内環境を整えるのは、何歳から始めてもOK。腸はケアした分だけ応えてくれると思いますので、ぜひこまめに水溶性食物繊維を取りながら、イキイキとした毎日を過ごしてください」(小林さん)

腸は「肌」とも関係している! 日ごろから腸の教育を

 そして最後に、再び日経BP総研メディカル・ヘルスラボ客員研究員の西沢邦浩が登場。小林医師と一緒に「腸」に関するトークを展開しました。

西沢 長く便秘が続くと肌に影響が出てくるのを実感される方も多いと思います。

小林 私自身も、お通じで悩んでいる頃は肌の悩みを抱えていましたが、腸内環境を整えたら肌の調子もよくなりました。実は肌の表面にも菌がいて、腸内環境が整うことによって肌の菌のバランスもよくなり、肌トラブルが改善されていく傾向があります。

西沢 脳と腸が関係しているだけでなく、腸と肌も関係があるんですね。あと、最近人気のある糖質制限は、腸の健康にとってはどうなんでしょうか。

小林 日本人は真面目なので、糖質制限をすると決めたら、本当に一切糖質を取らない人も多いのではないでしょうか。ただ、徹底し過ぎると腸の有用菌のエサである糖質が不足して腸内環境を悪化させてしまうことがあるので、やはり極端なことをされるのはオススメできないですね。

 また年末年始は外食が多くなり、腸内環境も悪くなりがちな季節ですが、日頃から腸を教育していれば、すぐにいい方向に戻ってくれると思います。ですから、普段から腸内細菌の多様性を考え、バランスのいい食事を心掛けてみてください。


 心と体の健康に密接に関わっている「腸」。「健美腸」を保つための情報がたっぷりと詰まった講演は、会場の女性たちからの大きな拍手で幕を閉じました。

「今日からはじめる健美腸ルール」についてはこちら
「医者が教える最高の美肌術」についてはこちら