2018年11月30日(金)、12月1日(土)に東京ミッドタウンで開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2018 Winter」。さまざまなトークセッションが行われる中、生活経済ジャーナリストの和泉昭子さん、三菱UFJ国際投信の佐藤知美さんが登壇した本セッションは、立ち見も出るほどの人気ぶりでした。人生100年時代といわれる今、どのように資産を増やしていくべきかを教えてもらいました。

今こそ未来を見据えた資産形成を始めるべき

 これからの時代、寿命は延びているのに、年金はいくらもらえるのか分からない。年金受給が繰り下げられたら、いったい何歳まで働き続ければいいのだろう? 資産を増やすために投資を始めたくても、リスクが怖い──と心配している人も多いのではないでしょうか。

 セッションの第1部で基調講演を行った和泉昭子さんは「今は人生100年時代。これまでの『60歳定年』で老後のプランを考えていると残りが40年間もあり、どうやってもお金が足りなくなります。未来のことを考えて、資産形成を始めるべきです」と呼びかけました。

 さらに時代は「Society5.0」に移り変わろうとしています。原始の狩猟社会から農耕、工業を経て現在の情報社会までをSociety1.0~4.0と位置付け、Society5.0ではAIやビッグデータ解析といった新技術によって超スマート社会が実現するといわれています。

 「Society5.0を生き抜くには、自分が『AIに代替されない働き方』、『人と人をつなげるコミュニケーションスキル』を身に付けることが大事。定期預金にお金を預けるだけで増えた親の世代とは違いますから、常に『お金に関する情報をブラッシュアップ』することも必要です。そして、『どんな社会になっても自立し、生活の基盤をつくるための資産形成』を今すぐにでも始めましょう」(和泉さん)

 さて、その資産の増やし方ですが、皆さんは「72の法則」を聞いたことがあるでしょうか。72の法則とは、72を金利で割った数が「お金が2倍に増える年数」という説。一般的な1年もの定期預金の金利0.01%で計算すると、貯蓄を2倍にする期間はなんと7200年! いくら長寿社会といっても、とうてい無理な年数ですね。

 「定期預金だけで資産を増やすのは困難ですが、投資による資産運用があるとキャッシュフローが変わってきます。100歳まで生きるとすると、40~50代にかけて住宅購入、子どもの大学進学、親の介護、昇給の頭打ちなどが重なり、資産を0.5%で運用していたとしても85歳で赤字に転落してしまいます。ところが、2%で運用できれば、家計が改善するんです。今は『NISA』『つみたてNISA』『iDeCo』といった節税メリットのある制度があるため、正味2%で運用することはそれほど難しくありません」(和泉さん)

知っているようで知らない!? 「NISA」「つみたてNISA」「iDeCo」のメリットとは

 では、ここで「NISA」「つみたてNISA」「iDeCo」のポイントを整理しておきましょう。

NISA(少額投資⾮課税制度) 年間120万円の範囲内×5年間=最⼤600万円の投資で、生まれる利益に対して税⾦がかからない。

つみたてNISA 年間40万円の範囲内×最長20年間=最⼤800万円の投資で、生まれる利益に対して税⾦がかからない。NISAに比べて投資先は限られるものの、⾦融庁が選んだ一定の投資信託で時間分散できるので、初⼼者におすすめ。

iDeCo(個人型確定拠出年⾦) 会社員から⾃営業、公務員、専業主婦(夫)まで、ほぼすべての⼈が加⼊できる自助努力の私的年金制度。掛け⾦の全額(上限あり)が所得から控除され、所得税・住⺠税が軽減される。運⽤で生まれた利益にも税⾦がかからない「最強の制度」。

 「多くの働き⼥⼦の皆さんは、配偶者控除など税⾦⾯の恩恵が受けられず、税⾦と社会保障がめいっぱい引かれています。でも、この3つの制度を使えば税制メリットが受けられるんです。
 例えば、つみたてNISAで毎月1万円を年3%で複利運用した場合、20年後には578万円になります。ところが、一般の金融商品では税金が引かれますから、524万円。実に54万円の差が生まれるんです。こんなおいしい制度を使わない手はありません。
 また、iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、『⽼後資⾦に⼿を付けられない』のは、逆にメリット。一定の収入がある人なら、節税メリットの⼤きいiDeCo、つみたてNISA、NISAという優先順位で始めるといいですね」

 その上で、和泉さんは投資の3大鉄則を教えてくれました。

(1) 分散……投資を始めるなら、1銘柄でまとまった資金が必要な個別株式より、少額で分散できる投資信託を。「⼀つの株式に資金を注ぎ込むと、企業の不祥事などがあった場合にダメージが大きいです。国内・海外、株式・債券などを組み合わせた投資信託でリスクを分散しましょう」。

(2) 長期……いざ、投資をはじめたら短期間で売り買いするのではなく、10年、20年と⻑いスパンで運⽤する。「多少の値動きがあっても、分散しながら長期運用すれば、元本を割る確率は下がります。特にiDeCoは所得控除が受けられるぶん、税金面で得をしています。短期の値動きに一喜一憂しないで」。

(3) 積立……投資は継続が⼒。「⾼い時期に買うのは避けよう、安い時期にまとめて買おうとしても、個⼈がタイミングを⾒極めることは難しい。毎⽉、⼀定額を積⽴するのが堅実です」。

 投資の必要性と、投資商品についてのポイントを整理したところで、第1部は終了しました。