大手総合商社の丸紅が、2018年4月から導入した「15%ルール」が注目を集めています。この制度は、就業時間の15%相当を、自分の所属する部署にかかわらず自由な発想で新しい事業の企画立案やアイデア創出に充ててよいとするもの。従来は担当部門ごとに、それぞれで経験を積んで専門性を深化させていくことが総合商社におけるキャリアパスの主流でした。ですが、急激に変化するビジネス環境に対応するため、既存の枠組みにとらわれないイノベーション創出を目指し、新しい仕組みづくりに着手したのです。専門領域以外の仕事にも取り組んでみたいけれど時間がない、社外で副業といっても何をしたらいいか分からない――。そんな気持ちを持つ人に、会社として背中を押していくのがこの制度の目的。導入されてから約半年、実際に変化が生まれているのでしょうか? 現場の声を聞いてみました。
「所属は経理部、空いた時間で新しいビジネスプランを立案」
「15%ルール」を活用して、新規プロジェクトの実現を目指す田子奈々瑛さんは、入社3年目。現在は経理部で決算の公表に関する業務に携わっています。取材時は、丸紅が社内で開催するビジネスプランコンテストの一次審査へ向けた準備の真っ最中。社内外の人材が、組織や会社の垣根を越えて協力し合える「人材シェアリング」の仕組みの実現を目指し、1日当たり1時間ほどの勤務時間を、その打ち合わせに充てているといいます。
「新しいビジネスプランの立案に関わることで、担当業務のことだけを考えて仕事を行うのではなく、『私個人がどんな価値を社会に提供していきたいか』ということを考えるようになりました。自ら行動を起こすことで、今までとは違う切り口から、自分のキャリアと向き合う意識が生まれました」(田子さん)
田子さんのキャリア意識を変えたという「15%ルール」。一体どんな取り組みなのでしょうか。
●丸紅が導入した「15%ルール」とは?
●組織横断的な取り組みで「新しい価値を創出」
●制度導入から約半年…「若手社員だけではなく40代、50代以上も参加」
●社内資料やフローの見直しも ムダを省く工夫を徹底
●所属部署の枠を超えて自由に発想「新鮮で楽しいチャレンジ」
●「一人ひとりの意識をどれだけ変えられるか」課題も