農林水産省の官僚として国産材の利用促進に取り組んでいる松尾真奈さん。松尾さんには官僚として働くほか、もう一つの顔があります。それは、若手官僚やビジネスパーソンらが集まる早朝勉強会「霞ヶ関ばたけ」の代表。完全に業務時間外の活動です。国家公務員が業務外での活動をすることには制約が多いイメージがありますし、そもそも「忙しくて両立しにくいのでは?」という疑問も。1児の母でもある松尾さんが、本業・勉強会・育児をどのようにマネジメントしているのか、インタビューしました。

ファーストキャリアに農林水産省を選んだ理由

 新卒で農水省に就職した松尾さん。進路を決める原点になったのは、大学時代のイギリス留学でした。

 「古いモノや田舎を大切にするヨーロッパの価値観に触れ、自分の人生で大切にしたいものが定まった感じがしたんです。留学先で政治について勉強したこともあり、『自分の国のために働きたい』という気持ちも芽生えました」(松尾さん)

 その価値観を日本で実践する方法を考えたいと思った松尾さんは帰国後、当時農水省が展開していた「田舎で働き隊!」というプログラムに参加。京都府京丹後市で半年間を過ごしました。このプログラムは、田舎の暮らしに関心を持つ大学生や社会人が地方の農村や漁村に入り、農作業を手伝ったり、村に人を呼び込むためのイベントを企画したりするもの。

 「田舎にどっぷり漬かる体験そのものが楽しかった。また、農業を志す人や村の文化を守る活動をしている人など、さまざまな出会いがあり、刺激を受けました。『この分野で日本に貢献していきたい』と考えるようになり、農水省を志しました」(松尾さん)

農水省で働きつつ、「霞ヶ関ばたけ」という勉強会の代表を務める松尾真奈さん
農水省で働きつつ、「霞ヶ関ばたけ」という勉強会の代表を務める松尾真奈さん

松尾さんが代表を務める「霞ヶ関ばたけ」とは?

 2013年に入省し、初めて配属されたのは現在の部局とは異なる経営局総務課。その半年後に同じ局の農地政策課の併任がかかり、法律をつくる業務を担当。松尾さんを待っていたのは、「日の光を浴びる暇がないほど」の多忙な日々でした。

 「残業が多く、時期によっては帰宅が朝になる日もありました。昼休みも各所からの電話対応などでデスクを離れることができず、1日を終えて気が付くと、あ、今日ずっと庁舎の中にいたな、と」(松尾さん)

 そんな生活が少し落ち着いた2015年ごろ、友人に誘われて「霞ヶ関ばたけ」の勉強会に初めて参加したといいます。勉強会は、「食」や「農林水産業」に関係する活動に携わるスピーカーを2週間に1回程度の頻度でゲストに招き、若手官僚やビジネスパーソンなど20人ほどが集まって交流するというものでした。

 「部局が違う人や、官僚ではない民間の人と話せることが楽しくて。日の光を浴びられない生活に慣れていた当時の私にとっては、外の空気を吸える感覚に魅力を覚えたのだと思います。何度か顔を出すうち、運営を手伝うようになりました」(松尾さん)

<次ページからの内容>
●勉強会を始めて得た気付き 「実は企画が得意」
子どもを抱えて勉強会に参加 「意外と行ける!」と実感
●本業以外で自身のスキルを発揮できる場を発見
「バッファを持たせる」「他人に仕事を振る」…両立のコツを公開
●3カ月に1度夫とホテルに泊まり込み「夫婦会議」を開催
●職場、勉強会、住まい…さまざまな場で信頼関係を築くことを意識
●シェアハウス生活 いざという時は助けを求める勇気も
●迷っている人は「スモールスタート」を切ってみよう