カラッと晴れた週末の午後。キャンプサイトに到着しました。周囲には家族連れやグループもいますが、サイト同士はお互いに10メートル以上は離れているので、特に気になりません。

 隣のサイトでは、アラフォーの女性が一人用テントを設営しているのが見えます。設営が完了すると、中に入ってリラックスしている模様。今日はここで1泊するのでしょう。いいな……。

 さて、筆者は日帰り予定なので、バーベキューに取り掛かります。今日持ってきたのはステーキ肉(食べやすい大きさにカット)、鳥もも肉(カットして竹串に刺したもの)、粗びきウインナーソーセージ2本、タマネギ、パプリカ、エリンギ、アスパラ(すべて適当にカット)。切ってプラスチックバッグに入れるだけなので、準備はわずか5分で完了。お弁当作りよりはるかに楽です。

海を見ながらテントでソロキャンプする人も。利用したのは城南島海浜公園(東京都大田区)。飛行機が間近に見られることでも人気のスポット
海を見ながらテントでソロキャンプする人も。利用したのは城南島海浜公園(東京都大田区)。飛行機が間近に見られることでも人気のスポット
ロゴス ROSY卓上ステングリル。厚みはあるがA4サイズのミニトートにすっきり入ります
ロゴス ROSY卓上ステングリル。厚みはあるがA4サイズのミニトートにすっきり入ります
エコココロゴス・ミニラウンドストーブ3。コンパクトなサイズ。2個で十分過ぎるほどよく焼けました
エコココロゴス・ミニラウンドストーブ3。コンパクトなサイズ。2個で十分過ぎるほどよく焼けました

 こんなに楽だと一人BBQ、はまっちゃうかもと思いながらコンロを取り出し、レンコン形の炭を二つ並べます。ところが、ここから思いの外の苦闘が待っていました。

火が付きません。なぜ……

 説明書きには「1カ所を20秒以上加熱するとすぐに火が付きます」ということが書いてあるので、チャッカマンで炭の表面をあぶります。

 ところが、あぶる火がすぐ消えてしまいます。海のそばなので意外に風があるのです。あぶる位置を変えたり、コンロの場所を動かしたり、自分が風よけになったりして必死の防風態勢を取りました。

 なんとか10秒ほど同じところをあぶり続けると、シュルシュル……と糸のように細い火が表面を回ります。しかし、来た来た! ……と喜んだのもつかの間、そのまま消えてしまいます。カチカチと何度も点火を繰り返すうちに指がこわばってきます。ちぎったティッシュを炭の穴に入れて点火してみるなど工夫もしましたが、やはり付かない! 30分近くカチカチやっていたら、ついにチャッカマンのガスがなくなってしまいました。

 うなだれて公園内の売店まで新しいチャッカマンを調達に行きました。もしこれが山奥で、売店もなかったら、ここで敗退ということですね……。不安と悔しさが胸をよぎります。

 さあ、第2ラウンド。風で消えないようにかばいながら、炭の側面をあぶっていきますがやはり着火しません。ところが、側面から炭の下にチャッカマンの先をぐいっと差し入れると、さすがにそこまでは風が回らないようで火が消えずに保つことができました。

 そして数秒後、炎が噴き出すように上がり、一気に着火! 感動~! まさにコロンブスの卵。というか、この40分間はいったいなんだったのでしょうか。炭の下から火を付ける。この単純なコツを発見するまでにこれだけの時間が必要だったのか。いや、そんなことはどうでもいい。勢いよく炎を上げる二つのレンコン炭を、ただ喜びをかみしめながら見つめました。

(左)欲張って一度に並べ過ぎると焦げます。(右)本当によく燃えます。全体に白っぽくなってきたらそろそろフィニッシュ
(左)欲張って一度に並べ過ぎると焦げます。(右)本当によく燃えます。全体に白っぽくなってきたらそろそろフィニッシュ

 火の勢いが少し収まったら早速、焼き始めます。かなり火力が強いので、すぐ焦げてきます。コンロが小さいので、「強火の遠火」にはなりません。一度にたくさん並べると、同時に全部がコゲコゲになってしまうので、焦りは禁物です。

 でも表面だけ焦げて中は焼けていないということもなく、いい感じにスピーディーに焼けていきます。好きなものばかり持ってきたのでどれもおいしい。ステーキ肉もうっかり焼き過ぎてしまいましたがおいしい。焼き鳥も短時間でしっかり中まで火が通り、軟らかい。1人分の食材は次々と片付いて、サクッと試合終了です。

火が消えません…

 あかあかと燃える炭は、じっと見ていてもなぜか飽きません。すべての食材を焼き上げ、務めを果たしてなお力強く燃え続ける炎。箱の説明書きには「30~45分間は燃焼します」とあったのですが、もう1時間以上燃え続けています。

 というか、消えないんですが……。これが消えないと片付けられないのですよね。1時間に1本しかない帰りのバスの時間が気になります。

 しかし、間違っても燃えている炭に水をかけたり、バケツの水に投入したりしてはダメです。一気に破裂して飛び散ることがあり、危険です。

 ここであせっても仕方ない。燃え続ける火をじっとながめて思ったのは、BBQの醍醐味とは、まさに火と向き合うこと。ままならない火のペースに付き合いながら、日ごろの「時短」プレッシャーを忘れて、とりとめのないことを考えるのもいいものです。

 炭の赤みが少なくなり、全体が白っぽくなったところでグサグサ突っつくと、ホロホロと崩れて灰になります。よく崩してからバケツの水に投入して、片付け完了。灰の量が少ないので片付けも楽チンです。

 次は海鮮BBQにして、殻付きホタテを焼いてみたい。次回の一人BBQランチ計画に思いを馳せる帰り道でした。

文/大崎百紀、日経ウーマンオンライン編集部 冒頭の写真/PIXTA