周囲の話し声は、意外とすぐ、気にならなくなりました。

 (おいしいなぁ、きれいだなぁ、幸せ~)

 そう感じているうちに、だんだん人の声が耳に入らなくなったのです。

 「必死で食べない」も大丈夫でした。いつもは早食いなのですが、フカフカのソファに深く腰掛けていると、ひと口ひと口が自然と丁寧になっていくようでした。

 「下のプレートの、温かいスコーンやキッシュなどはどうぞ最初にお召し上がりください」というホテルスタッフの言葉通り、下段のプレートをいただいてから、3年前に亡くなった、母のように慕っていた叔母へ手紙を書きました。

 便箋ではなく、「一筆箋」を持ってきました。出すあてのない短い手紙は、こういう一人時間にしか書けないだろうと思ったのです。言葉を選んで、彼女にただ、ありがとう、会いたいなぁ。とか浮かぶ言葉をつづりました。

 30分ぐらいたつと、少し飽きてきてしまいました。そこで、しばらく「ぼんやり、ただ考える」ことに集中してみました。

 でも仕事のことや家のことを考えるのはNGにしたので、何を考えようかな。

 あ、この海の向こうはどこへつながっているのだろう。海はつながっていて、ずっとこの先にはハワイがあるのかな。

 そんなことを考えているうちに筆者の心の中にふつふつと湧き上がってきたのは、家族や友人、仕事関係の人たちへの「ありがとう」という思い。

 おなかと気持ちが満たされ、余裕ができた心に浮かんだのは、自分はやっぱり一人では生きられず、いつも誰かに支えられて生きている、という当たり前のこと。いつも自分勝手に生きていて、このままじゃいけないって分かってる。ごめんなさい。でもありがとう。

 そんなことを、ソロアフタヌーンティーで、気付いた自分。ソロもいいけど、みんながいてこその「ソロ」なんですよね。

 時計を見るとまだ1時間半。30分を残してお店を出ることにしました。

 退席する時、隣でちょうど「一人バースデー」記念にやってきた40代らしき女性が、アフタヌーンティーセットとともに、ホテルスタッフに写真を撮ってもらっている姿が目に入りました。さすが、先輩。素晴らしい。次回はもっと、「楽しむ」ことに焦点を当てようかな。

 11月からは「White Afternoon Tea」がスタートするそうです。料金は今回と同じく3900円(税・サービス料込み)。もう一度行こうかな。

人生初めて火についてこんなに考えた…一人BBQの深遠

 昔ちょっとだけ「山ガール」ブームに乗ったことがある筆者。最近立ち寄ったアウトドア屋さんで、かわいいBBQコンロに一目ぼれしてしまいました。

 思えば、大人数のバーベキューってあまり好きではなかったです。食材の準備が一苦労だし、焼いたり食べたりが何だかバランスよくできず、焼く係になったら気付けばほとんど食べてなかったり、食べる側になったら妙に手持ち無沙汰で気を使ってしまったりで。やっと全部終わったと思ったら後片付けも面倒臭い。

 大空の下で、好きなものを火で焼いて食べる。シンプルでプリミティブな一人BBQを、サクッと実現してみたい……と欲望が膨らみました。

 しかし、BBQには難しい関門があります。それが「炭」の取り扱い。はい、炭火をおこすプロセスは常に他人任せで、一人でやれる自信はありませんでした。

 しかし、ここでまた出合いがありました。廃棄されるヤシガラから作った「エコココロゴス」。レンコンのような形に成形されている炭で、「わずか1分で簡単に着火できる」とうたっています。普通の炭よりもはるかにコンパクトで2個持っていけば十分そうです。

 まずは、海が見える都内の公園のキャンプ場に電話で予約をしました。「日帰りでお願いします」「何名ですか?」「一人です」「お、おひとり。はい、分かりました」というやり取り。電話口で妙にはきはきと受け答えしている自分に気付きました(変な人じゃないです~。ただBBQがしたいんです)。