今回ご紹介するのは、カカオハンターという聞き慣れない肩書を持つ小方真弓さん。世界各地の産地を巡ってまだ見ぬカカオを探し、現在は南米コロンビアでカカオ豆の輸出会社やチョコレート工場を経営している。こだわるのは「生粋のチョコレート」。品種や産地によって異なるカカオの香りと味をそのまま届けたいからだ。世界に飛び出したきっかけは、ある疑問と好奇心だった。それがついにはコロンビアのカカオをチョコレートの国際大会で金賞を取るまでの高みへと導く。チョコレートの裏話も驚きの連続で、読後はきっと食べたくなるはず!

第1回 退職理由は「カカオが見たい」 世界に踏み出した一歩(この記事)
第2回 会社を辞めて南米へ移住 チョコレート工場経営者に(11月22日公開予定)
第3回 南米で契約農家2000人を守る日本人 働く意味とは(11月29日公開予定)

カカオハンター・小方真弓さん年表
22歳 チョコレート会社に就職
28歳 会社を辞め、カカオ産地巡りをスタート
36歳 コロンビアのカカオ輸出会社に共同経営者として参画、コロンビアのカカオを探し始める
37歳 コロンビアに移住
39歳 コロンビアにチョコレート工場を建設
41歳 インターナショナル・チョコレート・アワード(*)を受賞
42歳 同じくコロンビアに、第二のチョコレート工場を建設

*2016年にはアメリカ大会のミルクチョコ部門にて最優秀賞を受賞。2015年と2016年には、世界大会のマイクロバッチダークチョコレート部門で金賞を受賞。

最初の仕事はチョコレートの商品開発

 私が大学を出て最初に勤めたのは、チョコレートの原料メーカーです。商品開発に興味があって選んだ職場でした。チョコレートは昔から好きでしたが、それより好きだったのはお菓子を作るほうで、たまたま大学の研究室の先輩が勤めていたチョコレートメーカーを訪問させてもらったところ、とても面白そうだったので志望したのです。

 会社の仕事は、輸入したカカオ豆からチョコレートを作ることでした。取引先はお菓子などのメーカーやパティシエなどです。チョコレートはそれを使うメーカーや菓子店が一から作っていると思うかもしれませんが、日本では、カカオ豆からチョコレートを作っている大きな会社は現在でも十数社ぐらいしかありません。ふつうは、カカオマス(カカオ豆を焙煎して皮を取り除き、すり潰したもの)を購入してチョコレートを作ったり、既にできている製菓用のチョコレートを買ってお菓子を作ったりしています。私が勤めていた会社は、カカオ豆からチョコレートを作る数少ない原料メーカーでしたので、私はいろいろなお客様に向けて何百種類ものチョコレートを開発していました。例えば、アイスクリームのメーカー様のためにアイスの外側に付けるチョコを作ったり、焼き菓子のお客様ならそのお菓子に合わせていろいろな味のチョコチップを作ったり。アイス用であれば、食感がパリッとしていて、剥がれにくく、そしてアイスに合った味にすることなどを考えながら、商品開発していたのです。

「カカオ豆は、多くはすぐには使わず一度寝かせるので、チョコレートになって皆さんに届くのは1年程度先のことも。カカオからチョコレートを作る会社が世界的に少ない理由にはそういったことも含まれます」
「カカオ豆は、多くはすぐには使わず一度寝かせるので、チョコレートになって皆さんに届くのは1年程度先のことも。カカオからチョコレートを作る会社が世界的に少ない理由にはそういったことも含まれます」