自信をつけたくて、習い事の日々

 私はお客様へのおもてなしが好きで、それだけをやりがいにCAを続けていました。のんびりした性格で、「人より抜きん出てやる!」というタイプでもなく、訓練でもいつも追試。ほんとうに「ドジでのろまなカメ」だったんです(笑)。そんな私でも、長く勤めるうちには、だんだん上のポジションになっていきます。人の上に立つということは、それだけ担う責任も重くなります。後輩をまとめたり、緊急事態の際にはお客様をお守りするための判断をしたり。果たして私にそんなことができるのかといつも不安でした。

「実際に緊急事態を経験した後、あまりのプレッシャーに、これは私には無理だと思ったんです」
「実際に緊急事態を経験した後、あまりのプレッシャーに、これは私には無理だと思ったんです」

 さらに私は、自分の存在意義にも悩んでいました。CAという肩書を取ったら、自分を表現できるものがなかったんですね。それをどうにかしたくて、月に10日の休日を、私はほとんど習い事に費やしていました。忙しくてもなんとか自分の時間をつくり、スキルを身に付けようとしていたんです。仕事に生かすためではなくて、自分の好きなことを学んで、自分らしい何かを身に付けたかったんです。

 おもてなし料理、江戸懐石、ケーキ作り、茶道、生け花、フラワーアレンジメント、紅茶、テーブルセッティング、お砂糖でお花を作るシュガーアートケーキ……、興味を持ったことをいろいろ習いました。同僚は有給休暇を次年度に残しているのに、私はそれもすべて消化してさまざまなスクールに通っていました。いろんな都市を飛び回る仕事だったので、職場以外のコミュニティーに身を置き、自分自身の居場所を発見したかったからです。