ストレスで気持ちが内向きに…このままじゃダメだ!

 そんなことがたびたび起きるので、とてもストレスでしたね。いつも家に親戚もどきがいて、大音響でテレビを見るし。「これじゃ仕事ができない!」と、夫とさんざんケンカしました。ある時、義理の父が、テレビの音を小さくして画面に張り付いて見ていたのは、さすがに気の毒でしたけど(笑)。

 今ではその義兄弟のような友達も、同じ敷地内に自分の家を建てて引っ越しました。「いったい誰の土地?」と思いますが、別々に住んでくれるだけでもありがたいです。

 ただ困ったのは、こうした騒動の中、だんだん自分の周りに壁を作ってこもりたいような気持ちになっていったことでした。「なんで私は、モンの村では人の家で何カ月も一緒に暮らしていたのに、自分の家だとこうなっちゃうんだろう?」そう考え、決めたんです。「このままじゃいけない! 私はやっぱり、家を子どもに開放して図書館活動をしないとダメなんだ」と。

 ちょうど裏に住む家が引っ越したので、「その土地を買って図書館にしたい」と夫に提案しました。そうしたら、夫がその土地を整地し、自力で図書館を造ってしまったんです。

 すぐに近所の子どもたちがのぞきにやってきました。「何これ?」「図書館だよ」「お金いるの?」「いらないよ」。わが家の周りは貧しい人が多く、子どもに無関心な親も少なくないんです。図書館には、そんな行き場のない子どもたちが毎日遊びに来ます。楽しそうな様子を見ていると、「現実の世界にいるだけだと、つらい状況の子も多いんだな」と思います。せめて本の中だけでも自由に心を解放することが、もしかしたら彼らの世界を広げる唯一の方法なのかもしれません。

自宅に造った図書館の前で、近所の子どもたちと 提供/安井清子
自宅に造った図書館の前で、近所の子どもたちと 提供/安井清子

 本のある環境で育った成果は一概には言えないけれど、でも、難民キャンプの頃に図書館で出会った子どもたちの成長を見ていると、本をたくさん読んで育った子は、生まれた環境を越えて、自分で現状を変えていける力があるように思えるんです。大人になって学校の先生や看護師として働いている子たちを見ると、私もとてもうれしいです。

安井さんは日本の家にも、出会った子どもたちの写真を大切に飾っています
安井さんは日本の家にも、出会った子どもたちの写真を大切に飾っています