「厚生労働省が19年にもデジタルマネーでの給与支払いを解禁する方針」というニュースが話題となっている。
 給与の支払い方を定める労働基準法24条1項では、「通貨で労働者に直接、月1回以上支払う」と義務付けられている。原則は現金手渡しとなり、銀行口座はあくまで例外扱いで認められているだけなのだ。厚労省は省令を改正し、スマホの決済アプリなどに給与を振り込めるようにしようとしている。
 なぜ今、そのような動きがあるのか。日本のキャッシュレス化の現状と課題、進展した際に起きる影響までを見ていきたい。

低い日本のキャッシュレス決済比率

 キャッシュレス決済とは、紙幣や硬貨などの物理的な現金を使用しなくても支払いが可能なこととされており、クレジットカード決済、電子マネー、スマホ決済などすべてが含まれる。

 経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課の「キャッシュレス・ビジョン」(平成30年4月)によると、キャッシュレス決済比率は韓国が89.1%に達するなど、キャッシュレス化が進む国では40~60%に達している。一方、日本では2016年時点で20.0%と低い割合にとどまる。

 日本では治安がよく、現金に対する信頼度も高い。店舗でのPOSレジもスピーディーで正確な上、ATMも各所にあり不便さがないなどの事情があり、キャッシュレス化がなかなか進んでこなかったのだ。また、キャッシュレス決済の導入・運用維持にコストがかかるなどの問題から対応していない実店舗が多いことも、キャッシュレス化を阻む要因となっていた。

日本では、キャッシュレス化が進んでいません (C)PIXTA
日本では、キャッシュレス化が進んでいません (C)PIXTA