生産性向上・消費活性化を目指すキャッシュレス

 では、なぜキャッシュレス化を促進しようという動きが進んでいるのだろうか。

 そもそも日本は、人口減や少子高齢化などにより労働人口が減少するため、生産性を上げる必要があるという事情や、キャッシュレス化を実現する新たなサービスの登場が背景にある。現金の流れを「見える化」して税収増につなげ、紙幣印刷などの現金支払インフラを維持するためのコストを削減することが狙いとなっているのだ。

 また、内閣府の「外国人労働力について」(平成30年2月)によると、外国人労働者数は増加し続けており、2017年10月末時点で127.8万人に上る。ところが、その「外国人労働者が銀行口座を開けない」という相談が多いことも後押ししている。キャッシュレス化が進めばインバウンド消費拡大につながる期待もある。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0220/shiryo_04.pdf

キャッシュレス化に残る課題と影響

 もちろん、キャッシュレス化にはまださまざまな課題が残っている。例えば、デジタルマネーでの支払いサービスを担う資金移動業者は、破綻時に資金が全額保全されないケースもあるなど、資金保全面などで銀行に劣る。マネーロンダリングやサイバー攻撃に対する高度な安全対策も求められる。

 影響ももちろん少なくない。給与が口座に振り込まれるため銀行の役割は大きかったが、今後この位置は揺らぐことになる。銀行に与える影響は間違いなく大きいと考えられるだろう。

デジタルマネーによる給与支払いが実現したら、「給料日にATMに並ぶ」人の光景も見られなくなるかもしれません (C)PIXTA
デジタルマネーによる給与支払いが実現したら、「給料日にATMに並ぶ」人の光景も見られなくなるかもしれません (C)PIXTA

 デジタルマネーでの給与振込が実現した場合、現金を使わないスマホアプリなどでの決済が増えるだろう。デジタルマネーを直接取引などで使えるようになることで、通過に替える手間やコストがなくなり、新しいビジネスが生まれる可能性もある。今後キャッシュレス化が進む可能性は高いので、皆さんも自分の生活に導入してみてはいかがだろうか。

文/高橋暁子 写真/PIXTA