目が疲れるのは「近距離・過剰な光・長時間作業」

 「まずは液晶ディスプレーの光。皆さんが普段見ている画面は、実は明る過ぎるケースが多いのです。余分な光によって目が疲れやすくなります。例えば、同じサイズの本と電子書籍の明るさを比較してみてください。電子書籍のほうが明るいですが、目の負担を大きく感じるでしょう。さらに、近距離を見続けることで、毛様体筋というピントを調節する筋肉が緊張して疲れ目が起こります」

 人が物を見る時は、水晶体の厚みを調節することでピントを合わせています。水晶体の厚みの調整に関わるのが「毛様体筋」という筋肉。近くを見る時は、毛様体筋は緊張した状態になり水晶体を膨らませます。

 逆に遠くを見る時は、毛様体筋は弛緩(しかん)して水晶体が薄くなります。PCやスマホを長時間見続けると、毛様体筋の緊張状態が続くため、筋肉が疲弊して疲れ目が起こるのです。また、視点が1点に集中するのでまばたきが減り、ドライアイも進行しやすくなります。

ピントを調整している毛様体筋が緊張し続けると、疲労がたまります (C)PIXTA
ピントを調整している毛様体筋が緊張し続けると、疲労がたまります (C)PIXTA

 デジタル機器には、まさに目が疲れる条件がそろっていたのです。

眼精疲労によって無自覚のまま視力低下が進行?

 眼精疲労によって、実は視力が低下しているケースもあります。例えば、視力が1.0の人が、眼精疲労によって慢性的に0.8くらいの視力しか出ていないということも。

 頭痛や目の奥の痛みといった、眼精疲労を自覚するような症状がなくても、長時間のPCやスマホ使用が日常的になっている人は、目の疲れを解消することで視力アップが見込めることもあります。

 自覚症状がなくても進行している可能性がある「目の疲れ」。次回は、「スマホ老眼」「眼瞼(がんけん)下垂」「ドライアイ」など目のトラブルについてそれぞれ解説していきます。

文/中島夕子 イラスト/PIXTA

この人に聞きました
森岡清史(もりおか・きよし)さん
医学博士。吉祥寺森岡眼科院長。浜松医科大学医学部卒業後、東京大学大学院医学系研究科にて網膜色素上皮細胞の研究に従事。東京医科大学、田無第一病院眼科医長を経て、吉祥寺森岡眼科を開設。眼精疲労治療室を併設し、東洋医学を取り入れた専門的な治療にあたる。著書に「眼精疲労はまかせなさい!」(現代書林)、「1日3回ツボを押すだけで目はすぐよくなる!」(KADOKAWA)など多数。