■男としての自信さえ奪ってしまうことも

 最後に もうひとつ。目の前でメイクをされると“男として見てもらえない寂しさ”を無意識下に感じ取ってしまう、というのがあります。これ、案外バカにできないほど大きな要因だと思うのです。

 『風姿花伝』の中で“秘すれば花”と世阿弥が言ったように、隠してもらっている方が感動が大きいこともある。現代だと、メイクがまさにそれだったりするわけで。でも、あんまりにも開けっぴろげに大切な儀式であるメイクを衆人環視の中で行ってしまう女性がいたとします。そこに「あんたなんかに、どう思ってもらっても結構。どうせ異性として見てないんだから」という本音を垣間見てしまうんです。たとえ、電車で出会っただけの知らない人でも。

 つまり、男としての戦力外通告を突きつけられるわけです。朝っぱらから、しかも通勤電車の中で。一日をがんばる気力すらなくなりそう。「だらしない」「草食化」なんて、昨今の男性を一部の女性は責めるけど、実はその気力を削ぐのもこういうことだったりして……。

 とは、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、 少なからず男性はそこに一抹の寂しさを覚える、ということは心の片隅に置いておいてください。

 ですが、10~20代の男性には、“電車でメイク”の肯定派も増えています。古くさいジェンダー論にとらわれず、「他人に迷惑かけなければいいんじゃない?」と思っている世代です。彼らが多数を占めれば、きっと状況も変わるでしょう。そのうち“無臭で飛び散らないから、電車内でもメイクできる”なんてポップが化粧品につくのかもしれません。

 ただ、現段階では不快に思う人の方が多そう。だとしたら、ムダに嫌われて人としての魅力をわざわざ落とすことはありません。もし貴女がモテたいのならば、電車でメイク、避ける方が無難だと思いますよ。

文/藤村 岳