今後、副業が当たり前になっていく中で、時間の切り売りをする仕事を副業や兼業に選ぶことは、ブラックな働き方につながりかねません。会社員を続けながらも、自分の価値を見極め、能力を役に立つ形でパッケージ化するには、どうしたらいいのでしょうか。この連載では、働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、「ポータブルスキル(持ち歩き可能な、どこでも通用するスキル)」を磨く方法を指南します。第6回の今回は、今の職場での実績が会社外で通用するか分からないという人に、あなたの価値を一般的なものとして商品化する方法を教えます。

会社で結果を出している人ほど「キャリアのモヤモヤ」を抱えている

会社の看板に頼らない「自分の実力」を見極めるには、どうしたらいい? (C)PIXTA
会社の看板に頼らない「自分の実力」を見極めるには、どうしたらいい? (C)PIXTA

 2008年に独立して以来10年間、「じぶん商品化」(=「自分の価値がここにあるのではないかな」と仮説を立て、パッケージ化し、値付けして販売しながら試行錯誤を繰り返すことで、どこででも通用するスキルを磨くこと)をしながら仕事を続けているため、いつのまにか多くの人のキャリア相談に乗ってきました。当初キャリア相談で想定していたのは「今の会社で結果を出すことができないから他に生きがいを見つけよう」という、いわゆる「逃げ」のキャリアの人が多いのかな、というものでしたが、そうではありませんでした。

 会社の赤字をV字回復させたという人や、会社という環境を最大限に生かし、仕事を通じて夢をかなえているように見えている人のほうが、むしろ心に深刻なモヤモヤを抱えていたのです。

●今の職場ではある程度結果を出してきたので新しい環境に身を置いてみたい。でも、いきなり独立とか、転職というのもちょっと違う気がするし、希望の新しい部署に異動できるかも分からない。もしかしたら結果がでたのは「たまたま」や「会社の看板」かもしれない。

●個人としての私に何ができるかを、今いる環境を維持したまま試してみたい、でも具体的に何をどこから始めたらいいのかが分からない。

●会社の実績を自分の副業として商売するのは守秘義務や会社への仁義から気が引ける。

 じゃあ自分はどうしたらいいの? というところでぐるぐるモヤモヤとしている人が多かったのです。特に仕事で結果を出している場合、「周囲に打ち明けると自慢のように聞こえるかもしれない」という心配もあり、本気で悩んでいるのに誰にも相談できずに行き詰まっている事例が多いことに気付きました。

 会社員を長く続けていると、仕事内容が多岐にわたるのに加え、月収・年収で仕事を受けているため、自分のしていることが果たしていくらの価値となるのかを判断するのは難しいという話は前回の記事「副業で、自分の仕事に『適正な値段』を付ける時のコツ」でも述べましたが、どこからが会社の力で、どこまでが自分の力なのか? ということは会社員のうちは分かりにくいものです。

 中堅出版社の編集者だった友人から聞いた話です。大手出版社に自分の会社が買収された時、今まで「○○社? どこそれ?」という対応だった取引先が多かったのに、大手出版社の肩書になった途端に手のひらを返したように話を聞いてくれるようになり、仕事が格段に取りやすくなったとのこと。仕事ぶりが同じでも、肩書で仕事のやりやすさが変わるような環境にいるとなおさら、自分のそのままの価値が分かりにくくなってきますよね。

 肩書は便利なものですし、肩書で仕事ができるというのは会社員ならではの恵まれた環境です。その環境を享受できるうちに、今後時間や場所、会社名にとらわれずに自由な働き方ができる世の中になるのを見越して、まっさらな「自分自身」の価値を今から試していくことが必要となってきます。

 では、会社の実績かあなたの実績かの区別が分からなくなったとき、あなたの価値を一般的なものとして商品化していくためにはどうしたらいいのでしょうか。今回は具体的ステップについて解説します。