今後、副業が当たり前になっていく中で、時間の切り売りをする仕事を副業や兼業に選ぶことは、ブラックな働き方につながりかねません。会社員を続けながらも、自分の価値を見極め、能力を役に立つ形でパッケージ化するには、どうしたらいいのでしょうか。この連載では、働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、「ポータブルスキル(持ち歩き可能な、どこでも通用するスキル)」を磨く方法を指南します。第4回の今回は、今持っているあなたのスキルを生かす方法を教えます。

せっかくのインプットがアウトプットにつながらないのはなぜ?

学びを成果に変えようとしたときに陥る壁…解決策は (C)PIXTA
学びを成果に変えようとしたときに陥る壁…解決策は (C)PIXTA

 この連載「じぶん商品化戦略」が始まってから、次のような悩みの相談に乗る機会が増えてきました。

◆今のところ副業をするつもりも、起業するつもりもないけれど、今のままではいけない気がしている

◆今すぐではないけれど、例えば3年後くらいに時間や場所にとらわれない自由な働き方ができたらいいなと考えている。でも、具体的に自分に何ができるのか分からない

◆まずは行動しないと! と思い、潰しがききそう、箔が付きそうな資格(キャリアカウンセラーやファイナンシャルプランナーなど)を勉強し始めたり、資格を取ったりしたけれど、それをどう仕事や人生に生かせばいいかを考えると止まってしまう

 この連載では「人生100年時代」に備え、時間や場所にとらわれず、時間の切り売りではなく価値の交換で仕事ができるようになる「じぶん商品化」の重要性や具体的方法について述べています。しかし、頭では分かっているつもりでも、いざ行動に移そうとすると、上記のような状態で迷っている人が多いように思います。

 このような悩みを抱えている人の話を詳しく聞いていくと、次の行動パターンが見えてきます。

1.今後の勉強のために時間をつくろう! と思っているけど、仕事が忙しくてなかなか時間がつくれない。やっと時間がつくれてもつい、疲れてしまってダラダラと無為な時間を過ごしてしまう

2.それでも頑張って、いざ資格や専門知識を得ても、自分がそんなことを始めてもいいのだろうか? 他の人にどう思われるだろうか? そもそも専門家を名乗るほどの知識もないし……という不安から発信や行動をためらう

忙しい人ほどさらに忙しくなる「働き方改革」のワナ

 このような状態になってしまうのも、ある意味仕方がないことではあります。

 「働き方改革」が叫ばれる昨今、企業は労働時間削減に動きだしていますが、実態としては、「○時までに帰るように」「でも仕事内容の生産性向上は各自工夫するように」といった会社も、残念ながらまだ多いのが現実です。「仕事は忙しい人に頼め」とはよく言ったもので、真面目に一生懸命頑張っている人ほど忙しくなります。転職しよう! とか副業しよう! と固い決意を持っている人でない限り、目の前の仕事の忙しさに追われてしまい、気付いたら夜になり、ぐったりして眠って、起きたら出社して……という日々なのではないかと思います。

 それでもなんとか時間をやりくりして、自分のスキルアップのために資格の勉強をしようという姿勢は素晴らしいと思います。勉強のし過ぎは「じぶん商品化」にとってはむしろ弊害になるという話は第2回の「真面目な人ほど『自分はまだまだ病』でチャンスを逃す」でも述べましたが、とはいえ勉強している間は、自分が前に進んでいる感じがするので安心するのも確かです。

 また、資格を取ったら取ったで、次の問題に直面します。今の職場で得た専門知識や、資格試験で培った知識を発信してみようと思っても、社内機密に関わるかもしれないと思うとむやみには発信できないし、自分のような資格を持っている人なんてたくさんいるから先生みたいに偉そうな知識を書くこともできないし、顔や名前を出して発信するなんてとんでもない、ということでちゅうちょしてしまうこともあるかもしれません。

 「忙しい → 時間がつくれない → 疲れ切ってしまう → 考える時間が取れない → ますます時間がつくれずに忙しくなる → 無理に時間をつくって学んだ勉強もうまく活用できない」という負のスパイラルにはまってしまうと、せっかくのやる気もそがれてしまいますよね。そこから抜け出し、いま持っている自分の強みをどう生かしていけばいいでしょうか。今回は解決策を二つ述べます。