初めて、そしてきちんと家事について話し合い

――それから、お互いがそれぞれに感じる「嫌いな家事」や「これだったらできる」というものを話し合った。その結果、日々の買い物と平日の夕飯作り、部屋の掃除、洗濯が紗絵さん、毎朝の朝食と休日の食事作り、食器洗いとお風呂掃除が夫、というように細かく担当分けがされた。

紗絵さん 担当分けはできたのですが、長く続きませんでした。数カ月後、仕事の大きなチャンスが舞い込んできたんです。大手企業が手掛ける施設でカフェの運営を任されることになり、法人化が決まったんです。

 ますます多忙を極めるようになり、担当になっていた日々の買い物や掃除、夕飯作りもだんだん追い付かなくなって。毎日ヘトヘトで、部屋も荒れ放題。このままでは生活が破綻すると危機を感じました。

いっそ、家事をやめてしまおう。自分を呪縛から解放

――まだ起業したてでスタッフも足りないため、仕事の穴を空けるわけにはいかない。夫も夜遅くまで仕事で子どもの保育園のお迎えや夕飯作りも頼めず……。「削るならば、やはり家事しかない」と紗絵さんは、こんな行動に出た。

紗絵さん 「カツマー」というわけではないのですが、たまたま勝間和代さんの家事本に出合って、「これだ!」と。「もっと家事を効率化させよう!」と生活全体を見直すことにしたんです。

 まず、食料品や日用品などの買い物。仕事帰りに子連れでスーパーに行くと、お菓子売り場で「あれ買って、これ買って!」と駄々をこねられて、余計に疲れてしまっていたんです。しかも夕方のレジは長蛇の列で時間がかかってイライラするし、いいことないなと。

 すべて定期宅配にしようと決めて、食料品と日用品は生協やネットスーパーで、米や水、ジュース類はネット通販で注文して自宅に運んでもらうことにしました。必要なものだけを注文するので、無駄な出費がなくなり、さらに重い荷物からも解放されて、それだけでもだいぶ楽になりましたね。

 それからどんどん弾みがついて、「いっそのこと、家事をやめちゃおう!」と、あらゆる家事を減らすことにしたんです。

――ワイシャツの洗濯やアイロンがけをやめてクリーニングに変えたり、トイレ掃除の頻度を減らすために洗剤を変えたり。「自分がやる家事」を徹底的に減らした。

紗絵さん 最も時間と気力を消耗していたのは、平日の夕飯作りでした。どうしたら作らずに済むのだろうと考えた時、ふと思いついたんです。自分が営むカフェの「日替わりランチのおかず」を買い取ったらいいんじゃないかと。素材にこだわった手作りのおかずで、私が作るよりも断然おいしく、栄養バランスもバッチリ。私はごはんを炊いて、お味噌汁を作るだけなので、献立を考えるストレスが減って、時間的にもかなり短縮されることになります。

 実際にカフェのおかずを持ち帰るようになったら、夫も子どもも「おいしい!」と大喜びで、私の出る幕はほとんどなくなりました(笑)。

 面倒に思っていた部屋の掃除は、ロボット掃除機(ルンバ)と床拭きロボットにお任せ。これは、夫に費用対効果をプレゼンして、購入する承諾を得ました。

 出掛けている間に床はピカピカ! 子どもたちに「これからルンバかけるよ~!」と言うと、それまで床にまき散らしていたおもちゃを自分で片付けるようになったので、毎回、「片付けてよ!」と怒ることがなくなったのもうれしい効果です。

自分が家事をやめて、家族の幸福度が上がった

――他にも家事をやめたことで、思わぬ効果がもたらされた。一番驚いたのは、夫の変化だ。

紗絵さん お持ち帰りのカフェのおかずがおいしくて、バラエティーに富んでいるものですから、夫の「料理熱」が湧いてきて、休みの日や誕生日などの料理を張り切るようになったんです。「今度は何を作ろうかな」と楽しそうにメニューを考えていて、それには私もびっくりしました。

 私が家事をやめればやめるほど、なぜか家族の笑顔が増えて、今までにない新しい循環が家庭のなかに生まれました。おそらく私の家事ストレスが減ったことで、私自身がよく笑うようになったからかもしれません。それに自分の苦手な部分やできない部分を認めて、「他力」に頼ったことも大きかった。夫や子どもが「ママができないなら、自分でやろう!」って、自然と動き始めたんじゃないかって思うんです。

「私が家事をやめる ⇒ 私の笑顔が増える ⇒ 家族みんなも笑顔になる!」の好連鎖が起きました イラスト/PIXTA
「私が家事をやめる ⇒ 私の笑顔が増える ⇒ 家族みんなも笑顔になる!」の好連鎖が起きました イラスト/PIXTA

 「女性なんだから、母親なんだから、ちゃんとやらなきゃ」という思いを捨てるのに時間がかかりましたが、捨ててしまえば意外と平気でした。むしろ「家庭がハッピーになることもあるんだ!」というのが新しい発見です。

 さて次回は、ダイエットをやめたのに理想の体形になったという、みゆきさんのストーリーをお届けします。お楽しみに!

文/伯耆原良子 イラスト/PIXTA