収入アップが目的なら長期目線で考えて

 一方で、注意してほしい点もあるといいます。「副業=収入アップ」と考えがちですが、「むしろ収入目的の副業はどこかで破綻する」と岡田さんは警告します。

 本業の他に副業の時間を取るわけですから、当然、本業に専念していたときより働く時間は長くなります。そのときに、副業の目的が「収入のみ」だと、結局は長時間労働となり、モチベーションが保てなくなったり、場合によっては心身ともに疲弊してしまうことも。

 「あくまでも本業に支障のない範囲で行うこと、が原則です。 さらに、長期目線で考えると、時給1000円前後のアルバイトを週2~3回して月に数万円の副収入を得るよりも、本業でスキルアップ・キャリアアップして給与を上げたほうが収入アップの道としては堅実です」(岡田さん)

たった一つの視点がキャリアを広げる

 副業をするときは、「常に『本業にどう生かせるか』という視点を持つようにすると、本業・副業ともに活性化される」と岡田さん。例えば、週に一度のアルバイトの接客業を「コミュニケーションスキル」という視点で捉えれば、本業が接客業でなくても十分に生かすことができます。

 日経ウーマンオンラインの読者アンケートでは、副業経験者・未経験者共に「時間の融通が利く」「空き時間を充てられる」という点が重視されていましたが、たとえその副業を選んだ理由が「時間の都合がつきやすいから」であったとしても、視点の持ち方次第でいくらでもキャリアアップにつなげられる、ということです。

 私たちのキャリアを広げるきっかけになるかもしれない「副業」。とはいえ、今はまだ日本で副業を推進・容認している企業はとても少なく、2割程度(※記事末「参考リンク」を参照)だといわれています。企業には就業規則や守秘義務があり、副業で社員の労働時間が増えることや、他社への情報漏洩の対策などが懸念点として挙がっています。

 「就業規則などの改定は、政府の動きもあり、『まさにこれから』という状態。今は『副業』という呼び方をしていますが、将来的には複数のコミュニティーに属し、複数の業務をこなす『複業』という働き方が主流になるのではないでしょうか」(岡田さん)

 次回からは、そんな「複業」に率先して取り組む企業を訪問し、「イマドキ副業=複業」の実態をレポートします。

文/三浦香代子 写真/PIXTA