時代は副業「原則、容認」へ

 他にも「お金を大切にするようになり、入出金を細かく管理するようになった」「本業の人間関係なんて一部の狭い世界だと思え、心がおおらかになった」といった変化を感じた人もいるようです。

 こうした「収入以外の効果」こそが副業のメリットなのだと、働き方のトレンドに詳しい求人サイト「エン転職」編集長の岡田康豊さんは言います。

 「副業が注目されたのは、景気が上向き始めた2012年ごろから。背景には、それまで『原則、副業禁止』だった政府の考えが、『原則、容認』へと変わってきたことが挙げられます。なぜなら、少子高齢化が進み、60歳で定年し、退職金をもらって悠々自適の生活を送るという昭和のモデルケースが破綻しつつあるからです。

 寿命が延び、年金の受給年齢も高くなり、生涯現役で働き続ける必要が出てきました。女性も長く働くことを前提にしたキャリア形成が求められるので、そのためにも副業がもたらすメリットは大きいと思います」(岡田さん)

副業は「ゆるく始める」のがいい

 長寿化が進み、私たちは「人生100年時代」ともいわれる新たなステージに突入します。そこでキャリア形成に役立つのが副業……とはいえ、本業と副業、二つの仕事を持つのは大変ですよね。そこで岡田さんは、「ゆるく始める副業」を勧めます

 「最初から『生涯にわたるキャリアを形成しなくては』と意気込んでしまうと、ハードルが高くなってしまいます。まずは自分が興味のある分野で、複数のコミュニティーに属して働いてみるとよいと思います。最近はプロボノといって、職務上の専門知識や知見を生かして社会貢献する動きも盛んです」(岡田さん)

 この「最初の一歩」を踏み出すとき、あくまで「仕事」として始めるのがいいそうです。セミナーや勉強会とは違い、仕事とは対価をもらって働くもの。おのずと働くモチベーションや、取り組む姿勢も真摯になり、得られるものが違うからです。ただ、副業が就業規則で禁止されている場合も多いので、「まずは自社の規定がどうなっているかを確認することが大切」だと言います。

 さらに、複数のコミュニティーに属していた経験は、長く働き続ける上で大いに役立つそう。身近な人の例として、岡田さんは自分の母親のエピソードを聞かせてくれました。

 歯科衛生士として働き、65歳で定年に。手に職はあるものの、70歳を過ぎると求人自体が少なく、実家で一人暮らしをされていたそう。ところが、家にいると近所の人からお茶を飲みに誘われるようになり、楽しい時間を過ごしながらも、それだけで時間をやり過ごすことに虚しさを感じ始めたそうです。

 「母はずっと働いてきたので、『仕事をしていない自分』に違和感があったんですね。その後、仕事が見つかり、契約社員として働き始めました。

 定年後の仕事ロスは男性のものと思われがちですが、女性にも起こるものです。特に女性のほうが長寿ですから、高齢になってからの一人暮らしが長く続くかもしれません。そんなときに副業があったり、会社以外のコミュニティーがあったりすると、自分の居場所が見つかって救われることもあると思います」(岡田さん)

人生100年時代、副業が将来の財産になるかも (C) PIXTA
人生100年時代、副業が将来の財産になるかも (C) PIXTA