ハラスメントにNOを言うムーブメント

 2017年、欧米ではマスメディアにおけるハラスメントの告発がブームになりました。英国の著名なテレビ司会者(故人)が何十年にもわたって次々と出演者たちへ強制的に性暴力を加えてきた事実が明るみに出たのを皮切りに、英国BBC放送局内での性ハラスメントや、名優と呼ばれるハリウッド俳優による未成年へのハラスメントなど、さまざまな告発がなされました。印象的なのは、それらのハラスメントは「業界の常識」、場合によっては「必要悪」と見なされていて、周知の事実でありながら誰も声を上げてこなかっただけ、という点です。

冷静に考えるとやっぱりおかしい。そこはNOだよね (C) PIXTA
冷静に考えるとやっぱりおかしい。そこはNOだよね (C) PIXTA

 その流れで「ストリートハラスメント」という言葉も生まれ、それに反対するムーブメントも起こりました。ストリートハラスメントとは、女性が街中を歩いていて人々から掛けられる不快な言葉や、つきまといなどの迷惑行為のこと。世界中の大都市で、さまざまな女性が「数時間歩いてみたら、こんな言葉の数々を掛けられる経験をした」としてアップロードする動画は、私たちが今まで「ナンパ」と呼んで「仕方ない」「自衛するしかない」と思っていたようなことが、明らかにハラスメントだと認識するのに十分な内容でした。そう、日本の言葉で言えば、タチの悪いナンパはれっきとしたセクハラなのです。

 興味深いことに、あの「恋愛大国」フランスの街頭でさえ、過度なナンパをストリートハラスメントだとして罰則を設けようとしています。この罰則化で「フランスの恋愛文化が損なわれる」という意見があるようですが、フランスのマルレーヌ・シアパ男女平等担当副大臣は「それはつまり『性的承諾年齢に達した大人なら、何をしてもいい』と思っているのがフランスの自認する恋愛文化だということではないか」と手厳しく反論しています。

 2017年は、日本国内でもこれまでの強制強姦罪が強制性交等罪として改正、性犯罪が厳罰化されました。若い女性著名人によるセクハラ被害の告発も相次いでいます。

 世界一安全といわれる日本に暮らし、性犯罪に比較的ヒリヒリした警戒心を持たずに日々暮らしている私たちも、普段生活しているレベルで何が「モテ」で何が「ハラスメント」なのか、いま一度確認するべき時に来たということなのかもしれません。それは女性だけでなく、男性も同じことですよね。