人材のクラウド化で、スキルがあれば自立して働ける時代へ

 そして、最近、新しい発見もありました。

 フリーランスというと、これまではデザイナーやライター、フォトグラファーなどのクリエーティブ職、あるいはSEやプログラマーといったIT職のイメージが強かったと思います。でもいまや、在宅ワーカーと企業のマッチングをするクラウドソーシングが進むにつれ、経理財務や人事、総務など、バックオフィス業務での専門人材のフリーランス化が進んでおり、企業からの需要も急増。

 「いま、皆さんが想像していらっしゃるよりもはるかに多くのバックオフィス職フリーランス女性がいて、会社員時代に身に付けたスキルを生かしているんですよ」と、フリーランスへの転身に詳しい専門家も話します。

 「財務、税務、労務など、バックオフィス業務はどんな零細企業の経営にも必ず必要なもの。でもそのためだけに人材を採用するのはコストがかかり、その部門をアウトソースしたいと考える小規模企業からのニーズが非常に大きいのです。仕事柄、保険加入の前に皆さんの収入状況を拝見しますが、バックオフィス職の皆さんはフリーランスになってから収入が上がっている方のほうが多いのです」

バックオフィス職はフリーランスになって収入が上がるケースも多い (C)PIXTA
バックオフィス職はフリーランスになって収入が上がるケースも多い (C)PIXTA

 「スタート時には一旦下がっても、いずれ以前の収入を越えるのが常。むしろサラリーマン時代の給料が安すぎるように思います。例えば大手の企業でも営業と内勤の給料格差が激しい会社はよく見受けられます。財務、経理、人事、労務などのバックオフィス業務って、世間の需要は高いのに企業からの評価は驚くほどマッチしていないんですよね」

 会社から離れて働くとは、スキルや自己管理や自己プロデュースなど、それだけ「自分」がしっかりしていなければいけないということでもあります。

 でもその代わり、「体調が悪い時は我慢せずお昼まで寝てしまうとか、平日昼にホットヨガやスポーツジムに通っているという人も多い。混雑する時間帯を外して友達とゆったりランチしたり、ノマドワーキングがしやすい、人が少ない穴場カフェをたくさん知っていたり。子どもともっと一緒にいたくてフリーランスになった、ある人は、海の見える家賃の安い街に事務所を借りて、そこに子どもが放課後に友達を連れてきてワイワイ遊べる、なんて夢を実現していました。自分が商品でもあるという意識から、私の目から見て、あか抜けてきれいな方が多い」とか。

 フリーランスはあくまでも働き方の選択肢の一つですが、通勤に耐えて「定められた時間、定められた業務をして物理的に会社の椅子を温める」ばかりが働くということではないとの認識が、ようやく広い業種で見られるようになった、広くそういう生き方が可能な時代がやって来たのだと感じます。

 例えば今年1月に厚生労働省によるモデル就業規則の改定案が公表され、大企業から中小企業まで副業を解禁する企業が次々と現れたため、2018年は「副業元年」とも言われています。

 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が監修した「フリーランス&『複』業で働く! 完全ガイド」(日本経済新聞出版社)というムックは7月の出版からたった10日で重版が決定したほどの売れ行きだとか。世間の関心の高さが感じられ、自立と自由を求めたこれまでとは違う就労モデルは今後ますます増え、加速していくと考えられます。

文/河崎環 写真/PIXTA