女性からの支持が厚いのはなぜ?

 この夏、誰も聞いてくれませんでしたが、私は「日本の首都に女性知事を実現することは世界の潮流上、当然の理(ことわり)」と勝手に唱えておりましたので、必然、「百合子一択」。選挙権がない(東京都民ではない)のが口惜しいほどの強気の百合子押しでした。

 小池百合子はアラサー、アラフォー女性からとても受けているようで、悪い評判は一つも聞きません。むしろ素直に「あの人、すごい女性だよね」と、キャリア女性の大先輩へ敬意を持っている人が多いようです。

 ●「『策士』とか『中身は男だ』といわれているが、私は小池百合子さんを応援する。20~40代の支持層に対しても政策で何かしてくれそうと期待できる。バッシングの交わし方も好感が持てる」(30代前半女性)
 ●「組織の中の政治家ではなく、一人の政治家として闘う女性政治家を初めて見た気がする。最初は傍観していたが、今では本気で応援している自分がいる」(30代後半女性)
 ●「これまで権力を持っていた大物政治家たちへの華麗な反撃を見るたび、恐ろしくもあるが、たのもしく感じる。本当に、『凄すぎる』女性だな…と」(40代前半女性)

「期待している」というアラサー女性は多い(C)PIXTA
「期待している」というアラサー女性は多い(C)PIXTA

 男性もおおむね「確かに、あの都知事選のメンツでは小池百合子しかなかったなぁ」と認める人が多い一方、特に年配の一部からは「厚化粧のババア」「政況に応じて媚を売る相手を変えた、水商売女」だとか、それはそれは下品なコメントが上がってくるのが気になります。男女差というよりも、特に中高年の男性から小池百合子を貶(おとし)める発言が出てくるのは、なぜなのでしょうか。

 それは、

 ●実は日本のシニア世代には、(男も女も)人生晩年の自己肯定として、女が成功することを心の奥底では望まない病理がある
 ●アラフォー・アラサー以下は、時代の趨勢で女も当然働かねば食えないという非常に公正な状況へ良い意味で”追い詰められた”ため、その病理から自由になり得た日本で初めての世代

 だからではないかなぁと思っています。ですから、女性が権力を持つことについて、アレルギーの有無の試験紙となったのが、今回の都知事選だったのではないでしょうか。もちろん個人差はあるはずですが、シニア世代でもっとも広く支持されたのがあの鳥越俊太郎氏だったという調査結果に、シニア世代の「現実離れ」「現状の認識ミス」を感じた人は少なくなかったでしょう。

「ユリコが素敵だ」―素直にそう思う

 多様な人々が職場に満遍なくいる社会を実体験で知っている人は、自分たちのリーダーを客観的に職業人としての実力や人間的な魅力で選んだなら、それが男性であろうが女性であろうが関係ない、という感覚。日本の中高年は「社会的な成功を収めて権力のある女」を身の回りで見たことがないから怖がってしまい、自己防衛から相手を貶めるようなことを言ってしまうのでしょう。

 知人の50代英国人紳士に、以前から小池百合子の熱狂的なファンがいます。投資分野を専門とする弁護士の彼は、東京出張で見たニュースの中にいた小池百合子衆議院議員(当時)に「日本にはこんなに美しく理知的で、十分に国際的な国会議員が存在するのか!」と一目で恋に落ちて以来、東京出張のたびに「ユリコが素敵だ」と日本人パートナーたちに述懐してまわるほど。今回の小池百合子東京都知事の誕生で、英国一、喜んでいるのは彼に違いありません。

 歴史的文脈がもちろんあったにせよ、日本にはつい先日まで「(男も女も、腹のどこかで)女の成功を望まない社会」が当然の顔をして居座っていました。今も頑固に、なかなか重いお尻を上げて出て行こうとはしません。

 でも、理想や理屈じゃなく「食っていくために」女も働くのが当然となった時代に大人になり、キャリアを毎日積み上げていく今のアラサーの女性たちの行く先には、男だろうが女だろうが何だろうが、当たり前のように肩書きや責任を負い、その頑張りの結果として成功できる社会が待ち受けているべきです。

ようやく動いた日本であなたはどう生きる?(C)PIXTA
ようやく動いた日本であなたはどう生きる?(C)PIXTA

 私たちがリオ五輪閉会式で目に焼き付けた「ユリコの金糸の帯」は、2016年夏、日本がようやく動いた象徴だったのかもしれません。