女にとって40が特別な数字である理由

 「なぜ女は嫉妬し合うのでしょうか」と、アラフィフの女性有識者に尋ねたことがあります。

 「それは、どの女性も必ず40歳くらいまでに産む産まないを一度は自分で選択せざるを得ず、もう一方の道を捨てたり、道から降りたりするからです」との答えに、私はいたく感じ入りました。

 「40」とは、出産の生物学的なタイムリミットを示す、象徴的な数字。どの女性も40歳頃までにどちらかを選ぶ(選ばねばならない)からこそ、他方を「捨てる」「降りる」意識がある。だから自分とは違うほうを選んだ人が何かを主張すると、「自分だってあっち側に行けたのに」と、ざらっとした気分になるのだと。

 ざらっとするのは、自分の選択は間違っていないと、自分にまだ言い聞かせている部分があるから。その選択に迷いがなければ、あるいは消化できていれば、もう他人がどう生きているかにことさら左右されない、ストレスフリーな達観の境地が待っているのかもしれません。

 大人の女性が「40代になって、楽になった」と言うのを、聞いたことはありませんか。それはおそらく「女として、もう悩まなくていいから楽になった」ということなのです。女性にとって、40は本当に文字通りの「不惑」の年たりうるのですよ! まさにその年に引退することを以前から決めていたと言われる安室さんの姿勢には、確かに惑わない、凛としたカッコよさを感じさせられて、アムラーじゃなかった私でもやっぱりため息が出てしまうのです。

産まないと決めた女、おっぱいにさよならした女

 「40」という年齢を境に、誰しも一度は「捨てた」「降りた」を経験している40代の女たち。だからこそ、「もうあっち側には行かない」その身で、また新しい局面を選んで進むのだと思います。

 最近、ご縁があって読んだ最強に面白い新刊エッセイ本が、たまたま2冊とも1972年生まれで今年45歳の女性著者によるものであることに気づいたとき、私は「やっぱり40代の女は強いわぁ」と天を仰ぎました。

 コラムニスト吉田潮さんによる「産まないことは『逃げ』ですか?」(KKベストセラーズ)と、「女のプロ」との称号を持つ川崎貴子さんの「我がおっぱいに未練なし」(大和書房)。それぞれ、不妊治療をやめた女性と、乳がんで片方の乳房を切った女性の生き様が、共に思い切りのいい笑いたっぷりの軽妙な語り口でつづられます。