女同士「あの頃」にどうやって戻るのか

 30代に入って、二度と同じ岸に立つことなんて想像できなかった、あの彼女たちが続々と私の岸辺へやって来るのを、私は驚いて眺めていました。

 仕事を辞めたり辞めなかったりはそれぞれでしたが、夫婦関係や家族関係に悩んだり、子どもが生まれたら生まれたで体力も気力も削がれて家にこもりっきりになったり、でも子どもがかわいくて赤ちゃんグッズだウェアだ、教育がああだこうだと一生懸命に育てている。限られた時間の中でおしゃれをして、人間関係をつくって、またそんなママ友関係に悩んだりしながらもランチだなんだと出掛けて行動半径を広げていく。

 なんだ同じだったんじゃん、やっぱり私たち同級生だったんじゃん、と思いました。

 そうこうするうちに、今度は私の子どもたちがどんどん大きくなり、40代になった私は家族のために拘束されることが少なくなって、ぽっかりと時間を持て余すようになりました。一人で夕食を取る状況になること自体が10年ぶりくらいに感じられ、自宅で夕食をたった一人分作り、ポツンと座ってご飯を口に運びながら、あまりの静けさにテレビのニュース番組をつけました。それまでは子育てのポリシーとやらで、かたくなに「わが家は夕食の時にテレビはつけません!」なんて言っていたのに。

 一人でご飯を食べるのも寂しいなぁと思い、同級生たちに声をかけました。「ねえ、もう私、家族が巣立っちゃって一人でご飯食べててさ。誰か一緒にご飯食べてくれない?」。そうして集まった、今度は残り少ない独身やDINKSの同級生たちとこじゃれた夜のビストロへ行き、牡蠣とシャンパンを流し込みながら、私は「女同士は、一周回ってまた同じテーブルに着くことができるんだ」とこっそり感動していました。

 なぁんだ、結婚したりしなかったり、子どもを産んだり産まなかったり、出世したり独立したり、みんないろいろ悩むしお互いガタガタ言うけれど、時間さえたてばみんな同じところへ戻って来るんじゃないか。誰々の妻とか誰々ちゃんママとか、どこどこ会社の課長とか取締役とかの所属や肩書きなんか関係なく、同じあの時の「個人」に戻るんじゃないか。

 以前、「なぜ私たちは『女友達』を必要とするのか? の答え」の記事でも書きましたが、「女は回遊する生き物だ」と、その時知ったのです。

時間がたてば、みんな、あの頃に戻れるんじゃないか (C)PIXTA
時間がたてば、みんな、あの頃に戻れるんじゃないか (C)PIXTA