職場でも、プライベートでも、自分の本心をありのままに相手に伝えられる人ってどれくらいいるのでしょうか。

 時々いますよねぇ、率直な人。イエスもノーも即答の人。「それ、間違ってる!」「私はそうは思いません!」と真っすぐ言える人。「今、怒ってる、悲しんでる」と感情をむき出しにする人。単純明快でウソがなくて、裏がなくて。むしろ憧れる。私などはできないからこそ余計に、憧れを感じます。

 でもたいていの人は、そんなにストレートに、心のままに、他人とコミュニケーションを取るなんてこと、ないのではないでしょうか。

本心? 言えないわ (C)PIXTA
本心? 言えないわ (C)PIXTA

形だけのおわび、形だけの花を持たせる……

 とある30代女性が、「私、スレているのでしょうか……」と眉間のしわをもみながらボヤきました。聞けば、彼女はママ友や上司とのやり取りでモヤモヤしているようで。「内側の本音と、外側の対応を使い分けている自分に気が付いたんです。そんな二面性がある人間はダメかな、って……」

 まず、彼女のママ友。先生の言うことをなかなか聞かない、いたずら好きでやんちゃ過ぎるなど、人の(彼女の)子どものしつけについて逐一ご丁寧に指摘してくるママ友がいるそうで、「なんでそこまであなたに言われなきゃいけないのか」と心中思うものの、彼女は「いつも迷惑を掛けてて、本当にごめんね……」と深々と頭を下げて謝り、毎回その場をしのいでいるそうです。

 次に上司。彼女は担当しているプロジェクトの企画資料の9割を自分で準備すると、毎回、上司に最終確認をお願いするそう。上司からアドバイスやコメントをもらって企画書を完成。そして企画がうまくいったときには、ほとんど彼女自身の案なのに「やっぱり○○さんに相談したおかげで今回もうまくいきました!」と上司に花を持たせる。そうして彼女は、実は超苦手な上司から、信頼を勝ち取っているというのです!

「自分が違うよね、と思うことがあっても、ダメ出しをしたり、ストレートに言ったりすることはないんですよね。そこに不快な思いをする人がいるなら、取りあえず謝っておく。『誠に申し訳ありません』と頭を下げて済むことなら、いくらでも謝れる。相手がいい気持ちで仕事ができるなら、思っていなくても『○○さんのおかげ!』と言える。自分の意見を率直に言える人に憧れもあるけれど、私にはできそうにないから。だけどこの自分の二面性について、時々、スレてるなぁ、私。本当にこれでいいのだろうか、と思うこともあるんです」

 ため息をついて話す彼女でしたが、それを聞く私は、むしろ大人だなぁ、と感じたのでした。