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29歳問題。なぜそれは「問題」なのか

2018年5月16日

「一線を越える」前の私たちに普遍的な迷いと、その処方箋

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アラサーの「アラウンド」の中身って?

 アラサーとは、「アラウンドサーティー」のこと。そんなのいまさら言わなくたって分かってる、と思いますよね。でも、ふと考えます。「アラウンド」ってなんのことでしょうか。どこからどこまでを指すのでしょうか。

 直訳するなら「〜のまわり」。「30のまわり」なら、私の感覚的にはプラスマイナス2歳くらいかなとも思います。28歳から32歳まで、うん、アラサーですよね。でも実際に使われているアラサーって、もしかしてもっと広くないですか? そして、どうしてみんな「アラサー」って呼びたがり、使いたがるんだろう。「30」に、どんな意味があるっていうんだろう。

 「アラウンド」に込められるのは、背中合わせの感情。「もうすぐ一線を越えるかもしれない」危機感と、「まだ一線を越えていない」安心感なんです。そして一線を越えてしまった後も、「まだ大丈夫、まだ安全圏、まだ誤差の範囲」と自分に言い聞かせられるのが、アラウンドという言葉の効用なのです。

 アラウンドとはあくまで周縁。そんな周縁でもてあそぶ、危機感と安心感の痛気持ちいいダブルバインドが、「アラサー」や「アラフォー」、「アラフィフ」が定着した理由なのではないでしょうか。

 「女は25まで」なんてふざけた言説も過去のものとなった今、それでも女性にとって10刻みの数字は、なぜかまだまだ重い。年齢なんて気にしない、年齢不詳でいいじゃない、と軽やかな自由を目指し装いつつも、実のところ自分の中ではしっかり時を刻み、「もう○○歳だから」「○○歳なのに」と、人によって濃淡はあるにせよ、意識してしまってはいませんか。

 30、40、50、それぞれの節目を巡って、私たちの感慨や反省その他が無数に存在する。だからこそ「アラウンド○○」のラベリングに価値が生まれている。

 では、アラサーにとって「30歳」を巡る感情とは、どんなものでしょう?

29から一つ年を取るだけ、なのに大きい、重い

 30歳を迎えようとする二人の女性が、香港の街角でそれぞれの「アラウンド」な思いを抱えて生きる。その様子を無名の女性監督が描いた映画「29+1」(邦題「29歳問題」)が映画祭で初上映された途端、SNSのタイムラインには「とんでもない傑作」との賛辞があふれました。

大ヒットした映画「29+1」は、邦題「29歳問題」として、5月19日(土)からYEBISU GARDEN CINE-MAほか全国順次ロードショー。「29歳問題」(c) 2017 China 3D Digital Entertainment Limited 配給/ザジフィルムズ/ポリゴンマジック

 香港での公開後は、興行成績トップテンに7週連続ランクイン、香港で20万人以上を動員する大ヒット記録という驚きの結果に。この物語はもともと、香港で最も有名な舞台女優であるキーレン・パンさんの脚本・演出による一人芝居の舞台劇でしたが、魅力的な役者さんをそろえ、パン監督が手ずから映画化したことで物語が立体的に広がり、より多くの女性たちの共感を集めて社会現象化するまでに至りました。

 そしてとうとうこの4月、今年度最有力と目されていた通り、キーレン・パン監督が第37回香港電影金像奨新人監督賞を見事に受賞。13年間自ら演じ続けた舞台劇の映画化、しかも監督デビュー作品での受賞に、香港じゅうが沸いたのです。

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河崎 環
河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆を続けている。子どもは20歳の長女、11歳の長男の2人。著書に「女子の生き様は顔に出る」(プレジデント社)
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