人間関係、360度死角なしの理由

 整った知的な容姿に、クリアカットな物言い。一見していわゆる「ダブル」なのだと分かる名前と顔立ち。初めてホラン千秋さんを見たのは夜のニュース番組でしたから、女子アナさんだとばかり思っていたらバラエティー番組でもシャープな発言が大受けで大活躍。

 「女子アナになりたくて民放キー局を受けたけれど全滅した」との告白をテレビで聞いた時、女子アナを諦めてタレントになった人がキャスターに抜てきされたとの大逆転エピソードに、大器ぶりを強く印象付けられました。

 コメントの的確さから「頭のいい人なんだな」と思わされるのはもちろん、大物タレントさんへも軽いツッコミを入れながらちゃんと笑ってもらえる、そんなチャーミングさでお茶の間の人気者になっていったのは、とても自然なことだったように思います。というのも、彼女のサバサバは誰も傷つけない、そして自虐なんて形で自分を傷つけることもない愛とユーモアのあるサバサバ、つまり「機知(ウイット)」だからなのではないでしょうか。

「第一志望に落ち続けたのに腐らなかった人生」

 ウイットとは、まず笑い。笑いの中で何か真実を指摘するから知的でちょっと皮肉で面白いのです。相手の心情を思いやれない鋭い毒舌とは別物で、人が傷つくとはどういうことなのかよく分かっているからこそ、それを絶妙なバランス感覚で避ける芸当でもあります。

 ホラン千秋さんのすごいところは、「第一志望に落ち続けたのに腐らなかった人生」です。思春期の頃から女優さんやタレントさんになりたかった、でもオーディションに落ち続けた。だから本意でなく進学を続けたものの、第一志望にはいつも縁がなかった。自分のしたいことやなりたい姿が分かっているから、いつも自分の姿を客観視して「これじゃない」と努力し続け、人に容赦なく評価されるオーディションを何百も受け続け、落ち続けたわけなのですが、それで腐らないってすごいことじゃないでしょうか。

 タレントさんの半生を振り返るバラエティー番組で、そんな第一志望に手が届かないことばかりだった青春時代を振り返って「○○高校はいい学校なんですよ」「○○大はいい大学なんですよ」「留学先の○○はいい場所なんですよ」、でも私が描いていた像とは違ったんです、と笑いを取っていたホラン千秋さん。まずは対象を褒めた上で、自分の思いを「自分責任で」率直に言う姿に、私は膝を打つ思いでした。

 この人は、率直の使い方がうまい!

 観客席からの「ライバルは誰ですか」との質問にも、まずは「自分自身です」と優等生っぽく答えはするものの、すかさず「でも気になるのはSHELLYさんです。大好きなんです」と話を続ける。質問の意図を邪推するなら、他の「ダブル」タレントの悪口を引き出したかったのではとも考えられますが、ホラン千秋さんはそこで他人を批判する方向へ率直さを発揮するのではなく、好きな人を率直に褒めたのです。