女性の「悩み」を解消してくれる商品やサービスは、どのようにして生まれたのでしょうか。今回紹介するのは、2014年に家事代行マッチングサービス「タスカジ」を立ち上げた、代表の和田幸子さん。ご自身の悩みや起業までの経緯、サービスについての思いを伺いました。

 核家族化が進み、共働きというライフスタイルが増えてきている現在、「仕事と家事の両立」は女性にとって大きな課題。近くにサポートをしてくれる人がいない状況で子育てをしている女性であればなおさら、両立の難しさを実感しているはずです。

 しかし、立ち止まってよく考えてみると、「両立」する以外に解決策はないのでしょうか。もしも「家事」を誰かに任せることができれば、今よりも時間や心の余裕が生まれ、より仕事や子育てに専念できる環境を手に入れられるはず。

 今回紹介するのは、家事を助けてほしい人と、家事を仕事にしたい人との出会いを支援する家事代行マッチングサービス「タスカジ」を立ち上げた代表の和田幸子さん。和田さんは、一体どのような思いで起業されたのでしょうか。

写真/清水千恵子
写真/清水千恵子
和田 幸子(わだ さちこ)
 システムエンジニアとして富士通に入社し、クラウドサービス立ち上げのプロジェクトマネジャーなどを務める。2008年に第一子を出産後、フルタイム勤務で復職。2013年に退職し、タスカジを設立。翌2014年に、家事代行マッチングサービス「タスカジ」をスタート。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018 働き方改革サポート賞」受賞。
◆和田さんの「欲しいをカタチに」ストーリー◆
【きっかけ】
・子どもの頃から料理があまり得意ではなく、「専業主婦よりも、外に出て働いているほうが向いているタイプなのかな」と思っていた。
 ↓
【家庭と仕事の両立に苦労】
・家事に時間と労力を割くことで余力がなくなる日々。ある日、ネットで知り合った個人の方に家事代行をお願いしたところ、生活が一変。
 ↓
【決断】
・家事代行のよさをもっと多くの女性に知ってもらいたいと、起業を決意。2014年7月に「タスカジ」をスタート。
 ↓
【「欲しい」を「カタチ」にした後は】
・サービス開始後、「家事代行を使ってもいいじゃない」というメッセージをメディアが発信。新しい文化を共に築き上げる。今後は、さらに現代にマッチした「助け合い社会」を再編できるよう、進み続けていく。

誰もが気軽に使える家事代行サービスを

 家事代行マッチングサービス「タスカジ」は、経験豊富なハウスキーパー(=タスカジさん)に、料理や掃除、洗濯などの家事をお願いできるオンラインサービス。

 依頼者とタスカジさんが個人契約をする仕組みで、代行業者を介する必要がないので、サービスのカスタマイズや指名もOK。これまで1時間3000円程度からだった家事代行を、1時間1500円からという利用しやすい価格でお願いできる便利なサービスです。

 忙しく働く多くのワーママと同じように、「タスカジ」を立ち上げた和田さんも、「家事」のことで悩み続けていた一人。特に料理が苦手で、「今日の夜は何を作ろう……」と、夕食の段取りを考えるだけでもストレスだったといいます。

「社会課題かつ、自分自身の課題を解決するサービスをビジネスにしたい」と、会社員時代から起業を考えていたそう 写真/清水千恵子
「社会課題かつ、自分自身の課題を解決するサービスをビジネスにしたい」と、会社員時代から起業を考えていたそう 写真/清水千恵子

 「実は小さい頃から、料理があまり得意ではありませんでした。周りには、楽しそうに料理やお菓子作りをする女の子もいましたが、私自身は、それを楽しいとは思えなかったんです。だから子どもの頃から、『私は専業主婦として家事をするよりも、外に出て働いているほうが向いているタイプなんだろうな』と思っていました」

 「家事が苦手だったため、家事の問題は他の人と比べても大きなな課題だった」という和田さん。2008年に出産して職場に復帰した後も、夫婦で分担しても家事がままならない状態が続き、新しいことにチャレンジする精神力がダウンしていくのを感じたといいます。

 「家事に時間と労力を割くことで余力がなくなり、自分自身の成長を感じられなくなっていました。だから『家事は誰かに任せたい』と思い、色々人から教えてもらって、とあるサイトで知り合った個人の方に家事代行をお願いしてみたんです」

 すると、和田さんの生活は一変。苦手だった家事をハウスキーパーさんに任せることで、時間も気力も充実し、「家事代行のよさを、もっと多くの女性に知ってもらいたい」と思うようになったそうです。

職場復帰後、山積みになっている洗濯物を見て「スカイツリーだ!」と喜んでいる息子さんを見たときにも、「ハウスキーパーさんを見つけよう……」と思ったそう 写真/清水千恵子
職場復帰後、山積みになっている洗濯物を見て「スカイツリーだ!」と喜んでいる息子さんを見たときにも、「ハウスキーパーさんを見つけよう……」と思ったそう 写真/清水千恵子

 「ただ、当時は個人間契約の家事代行ビジネスは、まだ確立されていませんでした。そのため、取引のルールやフォーマットを決めて、誰もが使える仕組みを作れば、仕事と家事の両立に悩む多くの女性の役に立つと思ったんです」

 そして和田さんは、2013年9月に起業を決意。同年11月に会社を設立し、翌2014年7月に「タスカジ」をスタートさせました。