女性の「悩み」を解消してくれる商品やサービスは、どのようにして生まれたのでしょうか。連載3回目に取り上げるのは、胸のサイズで服を選ぶアパレルブランド「HEART CLOSET」(ハートクローゼット)。2015年に「122」を起業し、同ブランドを立ち上げた黒澤美寿希さんに、胸の大きい人が抱える悩みや、ブランドをスタートさせたきっかけなどを伺いました。

社名の「122」の由来は、会社を登記した12月2日から。「登記してから半年後には、ハートクローゼットをリリースしていました」 写真/洞澤 佐智子
社名の「122」の由来は、会社を登記した12月2日から。「登記してから半年後には、ハートクローゼットをリリースしていました」 写真/洞澤 佐智子
黒澤 美寿希(くろさわ みずき)

 自身も胸が大きく、TPOに合わせた服選びに苦労した経験から、「122」を起業。胸のサイズで服を選ぶアパレルブランド「HEART CLOSET」(ハートクローゼット)を立ち上げ。同社の他にも、ゲーム関連のグラフィック制作会社「Ga-show」を経営。
◆黒澤さんの<欲しいをカタチに>ストーリー◆
<悩み>
・胸のサイズが合わず、おしゃれを楽しめる服に出会えない。サイズの合わない服は周囲から誤解を生むことも…。
 ↓
<決意>
・胸を隠すための服ではなく、オシャレを楽しむための服が着たい。「無いなら、自分で作ろう」と決意
 ↓
<現在>
・起業の不安はなし。でも、第三者に分かりやすく伝えることの難しさを感じることも。今秋、ブランドを全面リニューアル。さらなるステップへと進む。

胸のサイズが合わなくて、オシャレを楽しめる服がない

 女性同士であっても、同じ立場でないと共有しづらい悩みはあります。「胸が大きい」という悩みも、そのうちの一つではないでしょうか。

 例えば、友人が大きな胸のことで真剣に悩んでいたとしても、自分が「胸の大きい女性は魅力的」という価値観を持っていれば、悪気なく「羨ましい!」という反応をしてしまうことがあるかもしれません。しかし悩んでいる本人にしてみれば、こうした「理解されづらさ」に直面することで、さらに悩みを深くしてしまうこともあるはずです。

 胸のサイズで服を選ぶアパレルブランド「ハートクローゼット」を立ち上げた黒澤美寿希さんも、「胸が大きいことで似合う服がなかなか見つからない」という悩みを抱えてきた一人。まずは、胸が大きいことによって生じる悩みについて、詳しく聞いてみました。

「大きな胸の女性は、肩こりや日常の動作などにも悩まされています」 写真/洞澤 佐智子
「大きな胸の女性は、肩こりや日常の動作などにも悩まされています」 写真/洞澤 佐智子

 「私は現在Iカップですが、以前から服選びには苦労してきました。というのも、洋服のサイズはS・M・Lの3サイズ展開が多いと思いますが、実はどのサイズであっても、胸の大きさは『Bカップ』を基準にして作られていることがほとんどなんです。

 でも、これってよく考えたら不思議だと思いませんか? 女性は体がMサイズでも、胸はAカップの方もいればGカップの方もいます。ブラジャー自体は細かくサイズ展開されているのに、洋服に関しては、ほとんどBカップが基準になっているんです。

 そのため、基準となっているBカップから離れれば離れるほど、『体のサイズは合っているのに、胸のサイズが合わない』という状態になります。私の場合も、このブランドを立ち上げるまでは、合うサイズの洋服がなくて困っていました。

 オシャレをしたくても、できない。自由に選べる服がない。胸が大きい女性は、常にこうした悩みを抱えているんです」