顔をUVカットするなら、他の部位の照射時間を2倍に

 「サイトの下段に明記されている『紅斑紫外線照射時間』で示された時間より長く日に当たらなければ、しみになる心配はありません。それでも、どうしても顔だけは紫外線にさらされたくないという人は、手だけを日光に当てる方法もあります。

 その場合は、推奨されている紫外線照射時間の2倍の時間、日光に当たるようにしてください。あるいは、膝丈くらいのパンツやスカートをはいて、紫外線に当たるようにしてもいいでしょう。UVカットをうたっていない薄手のストッキングなら紫外線を通すことが分かっているので、素足でなくても大丈夫です。有害になる紫外線照射時間は、露出が多くても少なくても変わりません」と中島さん。

 有害紫外線モニタリングネットワークの観測地があるのは、全国12カ所。北から、落石岬局(北海道根室市)、陸別局(同足寄郡陸別町)、札幌局(同札幌市)、青森局(青森県青森市)、つくば局(茨城県つくば市)、横浜局(神奈川県横浜市)、名古屋局(愛知県名古屋市)、大津局(滋賀県大津市)、大阪局(大阪府大阪市)、宮崎局(宮崎県宮崎市)、辺戸岬局(沖縄県国頭郡国頭村)、波照間局(同八重山郡竹富町)だ。

 「住んでいるところに観測地がない場合には、東京の人なら横浜の値を参考にするなど、近くの観測地の紫外線照射時間を目安にしてください。天気にも左右されますが、仙台の人なら、青森とつくばの値を足して2で割るなど、2地点の平均を取ってもいいかもしれません」と中島さんは話す。

冬は日焼け止め不要かも。北日本の人はDサプリも検討を

 紫外線を浴びて生成されたビタミンDは約2週間、体内に蓄えられ、そこから必要な分が使われる。雨や雪の日は生成が難しくなるので、冬は晴れた日の昼間に、紅斑紫外線照射時間を超えない範囲で、積極的に日光を浴び蓄えておくとよさそうだ。

 実際、季節によるビタミンD生成の変動は大きいことが分かっている。東海地方在住の197人を対象にした調査(※4)では、血中ビタミンD濃度が20ng/mlに満たないビタミンD欠乏の人の割合が、9月は1.0%と少なかったのに対し、3月は86.7%、6月33.4%、12月26.0%だった。

※4:J Bone Miner Metab. 2005;23(2):147-51.

 「皮膚がん予防のために1年中日焼け止めを使う人もいるようですが、黄色人種の日本人の肌は紫外線によるダメージが少なく、皮膚がんも少ないのが実態です。日光によってつくられるビタミンDの重要性が再認識されてきている今、私はオゾン層の専門家として、オゾンホールの脅威ばかり強調し過ぎたと反省しています。特に日本の冬と春、秋は、晴れた日のスキー場や沖縄を除いて、日焼け止めは不要だと思います。平均的に日照時間が短く、紫外線の恩恵を受けるのが難しい北日本の人は、冬場は特に意識して魚を食べてください。

 紅鮭一切れ(120g)で39.6μg、サンマ一尾(150g)で14.5μgのビタミンDが取れます。魚が苦手、食事で取るのは難しいという人は、北欧諸国の人と同じように、冬から春にかけてはより積極的にサプリメントでビタミンDを補ってもいいのではないでしょうか。少なくとも、夏以外の晴れた日はUVカットをせずに、日に当たってほしい」と中島さんは強調する。

 冒頭でも触れたように、ビタミンDは妊娠しやすさや骨の強さ、病気の予防にも関わるとても重要なビタミン。「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」をチェックしながら、もともと体に備わっているビタミンDをつくる機能をフル活用して、病気にならない元気な毎日を送りたい。

この人に聞きました
中島英彰さん
国立環境研究所地球環境研究センター、気候モデリング・解析研究室主席研究員。1963年生まれ。93年東北大学大学院理学研究科博士課程修了(地球物理学専攻)。第31次、第48次日本南極地域観測隊参加・南極昭和基地にて越冬観測。国立環境研究所成層圏オゾン層変動研究プロジェクト衛星観測研究チーム総合研究官、同地球環境研究センター地球環境データベース推進室長、内閣府政策統括官付参事官(科学技術・イノベーション担当)などを経て、2016年7月より現職。東北大学大学院環境科学研究科客員教授(地球環境変動学講座)兼任。専門は、オゾン層の研究。趣味は登山。

取材・文/福島安紀 写真/PIXTA

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