朝ごはんで目覚めのスイッチを入れる
西多:体内時計をリセットする生物学的な刺激として、光に加えて重要なのは食事です。体内時計の機能を持つ遺伝子は、皮膚から内臓まで各細胞に備わっています。胃や腸にも体内時計の役割を持つ細胞はあるので、食べ物が入ってこないと、胃や腸はいつ起きたらよいのか分からなくなってしまいます。
池田:食べ物を胃腸に入れることによって、目覚めのスイッチが入るんですね。
西多:反対に、寝る前に食べ物を胃腸に入れると、体が「まだ起きているのかな?」と認識してしまいます。
池田:最近では「朝食を食べないほうが健康によい」という考えに倣って、あえて朝食を抜く人もいますよね。そこに精神上、健康上の問題はありますか?
西多:日経ウーマンオンライン読者の中心でもある20代~30代・働き盛りの人が朝食を抜くことには、非常に問題があります。
池田:朝ごはんを抜くと、頭が働かなかったり、お通じが悪くなったりしますよね。
西多:胃腸の調子も脳機能につながっていますし、朝ごはんを食べないと消化管が動きません。食事の回数が少ないと、特に女性は便秘になる傾向があります。胃腸への刺激というのは食べることでしか与えることができません。先ほど申し上げたように、胃腸を起こして体内時計を調整するには、食べて刺激を与えることが必要です。
朝食で摂取するとよい栄養素を知っておこう
池田:体内時計を調整するために、おすすめの朝食はありますか?
西多:どれが完璧な食事かというのは難しいですね。柑橘(かんきつ)類は覚醒効果があり、アロマの世界でも柑橘系の香りは覚醒方向に働くといわれます。柑橘類からはビタミンCも摂取できますね。ですが、取り過ぎると糖分過多にもつながるので注意が必要です。
和食は大豆製品や米があるので栄養バランスは良いものの、塩分が多くなる傾向にあります。醤油、漬物や梅干しが加わることもありますよね。高血圧の人には、和食が続くのはよくないでしょう。洋食は油断すると炭水化物が増え過ぎるという問題があります。朝昼晩、いつの食事でも共通していますが、何でも食べ過ぎはよくありません。
池田:私は「早朝グルメの会」を主宰していて、いろいろなホテルに朝食を食べに行っています。そこで出てくるメニューにはたんぱく質が必ずある印象なのですが、たんぱく質は大事ですか?
西多:たんぱく質は大切です。油断すると、日々の食事で不足しがちですね。現代人は、どうしても糖と炭水化物が過剰になるため、炭水化物は少なめを心掛けるほうがいいかなと思います。
池田:早起きすることで、心身の安定や安らぎに寄与する「セロトニン」がありますよね。朝食の食材でセロトニンが分泌されやすいものはありますか?
西多:そもそも、セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からつくられる物質です。そのトリプトファンは、豆、ナッツ、バナナ、チーズなどに含まれています。ただし、納豆を1日10パック食べたらセロトニンが出るわけではありません。
池田:食べれば食べるほどセロトニンが出るというわけではないのですね。
西多:食事は習慣なので、長い目で見て効果が出ることが一番重要です。バナナや豆を2~3日間たくさん食べても効果は出ません。反対に、トリプトファンが含まれる食品を食べない生活を数週間単位で続けると、欠乏が続いたことによる影響が出てくると私は思います。運動不足や栄養の不均衡は、続くと大きな差が出てきます。