失恋のエネルギーを発散させるには

 失恋した人は、多くの場合、やり場のないエネルギーを自分のうちに溜め込んでいます。そのエネルギーを発散したいがために、ヤケ酒をしたり、爆買いをしたり、思いつきで京都に行ったりするわけです。しかしそれらはどれも対症療法的なものなので、一時的には気が紛れますが、根っこの問題が解消されるわけではありません。言ってみれば、燃料に蓋をしただけの状態なので、ちょっとしたきっかけや(奈美さんや清田のように)夢によって再燃します。

 結局のところ、失恋によって発生したエネルギーを本当の意味で発散させるには、失った恋そのものに向き合うしかないのだと思います。清田の場合、桃山商事が行っている失恋ホスト活動が、図らずもそのような場として機能しました。

失恋ホストの“効用”

 失恋ホストは、恋に悩む女性の話にひたすら耳を傾ける活動です。相談者さんたちの多種多様なお悩みを聞くなかで、清田は自分と元カノとのやりとりを生々しく思い出し、何が本当の別れの原因だったのかを半ば強制的に再考することになりました。また、相談者さんから彼氏へのやるせない想いや憤りを聞いて「元カノもこういう気持ちだったのではないか」と悔やみ、清田が相談者さんに懺悔するという、不思議な構図になる場面もありました。

失恋という航海

 このように半強制的に自分の失恋に向き合い、ときにそれを語ることで、清田の中から失恋のエネルギーが少しずつ発散していき、徐々に自分の人生における元カノの存在が小さくなっていきました。失恋という航海を続けるなかでいつの間にか彼女に関する未知の大陸がなくなり、もうこれ以上考えてもエネルギーが湧かないというところまで辿り着いたのです。彼女のことを考えるのに飽きたと、清田本人は語っています。

 週3回見ていた夢も、2回になり、1回になり、気づいた時には全く見なくなっていました。

 そこに至るまでにおよそ3年かかったので長い旅路にはなりましたが、それでも、あの航海があったからこそ今の清田や、今の清田の恋愛があるのだと、側で見ていて感じます。

 さて、ここまで、清田がどのようにして週3ドリーマーから脱出したのかを見てきました。ただ、奈美さんに清田と同じように失恋ホスト活動を行うことを勧める訳にはいきませんので、次のページではその代替となるような活動について紹介します。