「思い出しても辛くない」を目指す

 相談文から解釈する限りでは、奈美さんは「自分が次の恋に踏み出せないのは、大好きだった彼のことを忘れられないからだ」と考えているようです。したがって最もシンプルな解決策は、「元カレのことを忘れること」になります。

 しかし、「忘れられないのは仕方ないと思っています」と奈美さんも書いているように、私たちの脳みそは、物事を忘れようと思って忘れられるようにはできていません。ましてや、人生のある時期に濃密で特別な時間を過ごした恋人のこと。むしろ「忘れる」のは不自然とすら言えるでしょう。

 だからここで考えるべきは、元カレのことを忘れずとも、次の恋に踏み出すにはどうすればよいのかということになります。

 (元)週3ドリーマーの清田に言わせると、失恋を乗り越えた状態とは、その相手のことを忘れることができた時ではなく、思い出しても辛くないと思えるようになった時、だそうです。実際に清田がその境地に辿り着いた道筋を、少し長くなりますが紹介していきます。

「大丈夫」と「復縁したい」の繰り返し

 清田とくだんの彼女は、決定的な別れが訪れる前に“別れる → 付き合う”のサイクルを何度か繰り返していました。なので最後に別れた後も、清田はこれが「本当の別れ」だとは信じられず、ほとぼりが冷めたら復縁できるのではないかと考えていたそうです。

 とはいえ、四六時中彼女のことに囚われていたわけではありません。原稿の締め切りは失恋とは関係なくやってきますし、桃山商事の活動もありますし、週末には趣味のサッカーがあります。こうした日常のあれこれに追われるなかで、それでもふとした時に彼女のことを思い出し、胸をかきむしる……実態としてはこのように、「大丈夫」な時期と「復縁したい」という時期を繰り返していました

 そんな清田にとって、週3で見る夢は、彼女への気持ちを再点火する“着火剤”でした。「大丈夫」な時期が続いても、夢によって不可抗力的に炎が燃え上がり、「復縁したい」に飲み込まれるわけです。奈美さんは「復縁の望みはゼロ」だと書いていますので異なるところもあるとは思うのですが、基本的な構造としては似ているのではないでしょうか。

 次のページでは、清田がどのようにその構造の外にでることができたのかを見ていきます。