「ファン」なのに、一方的に失恋してしまう

 一見つかみどころのないこのカナさんの状態は、あえて言うなら「ファン」に近いものだと考えられます。片想いのような気持ちを寄せていることは確かだけれど、まだ何の行動も起こしていないし、相手からも候補者として認識されていない。これは恋愛ではなくファンという状態に近い。

 具体的に言えば、カナさんと時計屋&バーテンの関係は「お客と店員」だし、五郎丸も「取引先の人」です。つまり単なるビジネス上の関係に過ぎず、そんな相手に恋人ができたからといって、それは果たして“失恋”と言えるのでしょうか。

 つまり、カナさんが失恋だと認識しているそのパターンは、例えば「大好きな芸能人ができる → しばらく追っかけライフを楽しむ → しかし相手に熱愛が発覚してショック!」というようなファン心理と同じ構造のものなのです。

 実態としてはファンなのに、それを「恋愛」だと認識し、自分の中で盛り上がったのち、一方的に失恋体験をしてしまっている──。実はこれこそが、今回の問題の核心ではないかと考えられます。