「本当に好きならこうするはず」という判断基準

 「本当の好き」というのは、彼の気持ちの問題ではなく、マサコさん自身が抱いている不安や願望の問題だと考えられます。

 つまりこれは、彼の気持ちの真偽を問うているようでいて、実はマサコさんの中に「男は本当に好きならこういう態度を取るはずだ」という判断基準があって、彼の行動がそこからズレている、という話なのです。

 相談文から読み取れるマサコさんの判断基準とは、こうです。

 マサコさんが求めている「男の本当の好き」とは、実は上記のように、「デートは男性から誘う」「急&曖昧な返事はしない」「時間を作る」「セックスに誘う前に告白する」といった要素のことだと考えられます。裏を返せば、「こういう要素が現状ないから、彼は私のことを本当には好きじゃないんだ」という風に感じているわけです。

「自分の気持ち」としてとらえるならいいけど……

 しかしこれは、ある意味かなり失礼な話かもしれません。なぜなら、自分の判断基準に当てはめ、相手の気持ちを勝手に決めつけているからです。

 もちろん、相手の発言や行動を受け、その意味や意図をあれこれ想像してしまうことは誰にだってあるはずです。それで一喜一憂するのは個人の自由だし、特に相手の一挙手一投足が気になる恋愛のようなシーンにおいては致し方のないことだと思います。ただし、それはあくまで「自分の気持ち」として行うべきです。

 それを「相手の気持ち」として認識しちゃうとおかしなことになるし、実際にそれを相手へ押しつけたら、もっとヤバいことになります。例えばこれを見てください。

 いかがでしょうか。「本当の好きが感じられない」という自分の不安な気持ちが、いつの間にか「彼は本当に私を好いていない」と相手に転嫁され、「本当の好きじゃないんでしょ!」と相手に言ってしまうのです。

 ちなみに、「相手の言動から意味を推測する」というのはポジティブなベクトルにも働きます。例えば「目が合って微笑んでくれた」という事実に対し、「もしかして私のこと……?」と妄想を膨らませるのは恋愛の醍醐味ですが、「私のことを好きに違いない!」となると途端にヤバみが出てきて、相手に「私のこと好きなんでしょ!」と迫ったらそれはストーカーの領域です。

 しかし、気持ちというのはカタチのない幻影なので、自分ですら正確に把握して区別することは極めて難しい。それゆえ、「本当の好き」という概念を導入するのは危険だと思うわけです。