「立ち向かうべき問題」があるかないか

 前ページで登場したマトモ人&クソメンとの関係をまとめると、この図のようになります。この、マトモ人の( ? )という欄に入るものが違和感の源泉であり、智美さんが割り切ろうとしているものの正体です。

 もはや察しがついていると思いますが、この欄に入るものは「つまらない」という言葉です。智美さんはマトモ人につまらなさを感じている。だから彼との恋愛に気乗りがしないのだと考えられます。

 智美さんの考える「マトモ」とは、「クソメン要素がない」ということでした。「すぐに泣く」「連絡をくれない」「キープしてくる」というのは智美さんを困らせたり苦しめたりするネガティブな項目であり、だからこそ「これらの要素がない=マトモ」という思考になっているわけです。

 しかし、実はこれこそがつまらなさの原因でもあります。クソメンには「苦しさ」と「楽しさ」があった。一方、マトモ人にはどちらもない。その結果、「苦しくないけど楽しくもない」というマトモ人との関係にモチベーションを見出せずにいる……。だからクソメン要素というのは必ずしもネガティブなものではないわけです。

 ただし、これは「苦しさと楽しさは二つで1セット」とか「苦しい恋愛ほど楽しい」といった話ではありません。ここで決定的に重要なのは、「立ち向かうべき問題があるかないか」という点です。

 それは、どういうことでしょうか。“問題”という言葉を辞書で引くと、解決すべき事柄、困った事態、話題、課題、問い……といった意味が出てきます。英語では「problem(プロブレム)」「issue(イシュー)」「matter(マター)」「question(クエスチョン)」といった言葉がそれにあたります(それぞれニュアンスに違いはありますが)。

 ここからもイメージできるように、問題というのは面倒くさいものです。しかし一方で、コストを費やして考えるべきもの、取り組むべきものでもあります。だからこそモチベーションにもなるわけです。

 クソメンとの関係には問題が存在し、マトモ人との関係には問題が存在しない──。これがモヤモヤの発生源であり、こう考えると智美さんがマトモ人との関係に違和感を覚えるのは極めて自然なことだと思われます。次のページで詳しく述べますが、「つまらない」「問題が存在しない」というのは「恋愛できない」ということと同義だからです。

 いくら頭で「まともで条件のいい相手」と思っても、結婚するというのはものすごく長い時間を共にするということであり、最初からつまらなさを感じている相手だとかなり厳しいものになるでしょう。そう考えると、「デートの直前でイヤになる」というのは体が発しているシグナルです。これを無理して割り切ろうとしたり、理屈で押さえ込もうとしたりするのは、むしろ危険なことだと思います。