「好きだ」という言葉が意味するものとは?

 まりこさんの言葉をひもといていくと、彼女が抱えている気持ちの輪郭が浮かび上がってきます。上司に対しては、同世代男子にない安心感に魅力を感じ、「イヤではない」という気持ちを抱いている。しかし、妻子持ちであるという点が引っかかり、関係を進めることを躊躇している……。これがまりこさんの現在地です。

 話をややこしくしているのは、上司が言った「好きだ」という言葉です。例えばこれが単なるワンナイトのお誘いだったら、まりこさんもそこまで悩まなかったでしょう。仕事では信頼できる上司でありつつ、ときどき肉体関係を持って癒しと安心感を得る──。そんなバランスの関係を築くこともできたかもしれません。

 しかし、「好きだ」という言葉があることで、この申し出を受けることの意味が変わってきます。少なくとも、上司にとっては“彼女”になることを意味するはずですが、最後に「彼氏は欲しいです」と言っているように、仮に関係を進めたところでまりこさんにとって上司は“彼氏”になりません

 このズレは小さくありません。なぜなら、気持ちに差があると「お互いに納得」することが難しくなるからです。仮にまりこさんがこの関係を続けつつ他の彼氏を探そうとしても、上司はそれを許さないでしょう。束縛や干渉が始まるかもしれないし、以前ならあり得たかもしれない恋愛相談もできなくなるはずです。

 思えば、まりこさんは以前この上司にセクハラの相談をしていました。そんな部下の女性に対し、待ち伏せしていきなりキスをするだなんて、彼はかなり紙一重なことをしています。それほど本気なのだと取ることもできるし、自分のことになると冷静になれない人だと取ることもできますが、それも結局、まりこさんが自分で判断を下していくしかない問題です。

 では、どうしたらいいのか。我々としては、上司を「彼氏」と見なせないなら、その関係は進めるべきでないと考えます。このままだと関係性が変化することにより、上司の魅力だった「安心感」が失われてしまう可能性が高いからです。気持ちにズレがあり、話せることも限定的になり、もしかしたら自己主張ばかりになるかもしれない上司に対し、魅力を感じ続けることができるでしょうか?

 現状まりこさんに強い恋愛感情がない以上、焦って関係を進めることはないと思います。しかし今回の一件は、まりこさんが彼氏を作るための重大なヒントを示しています。それこそが最大の収穫ではないかと思われます。