「誤射」しているという認識がそもそもない彼

 対策を考えるに当たって押さえておきたいのは、真由さんの彼は、自分のダメ出しや批判が、真由さんの反発や傷心につながっているとは夢にも考えていないだろうという点です。創作物の作り手に向けて放ったはずの銃弾が、知らない間に真由さんの一部に当たっている……。まずは彼が、このような「誤射」をしていることを認識する必要があると思います。そのためには、どうすればよいのか。

「真由さん=作り手」という認識

 我々が第一に真由さんに勧めたい行動は、「彼に自分の仕事の話をすること」です。これによって、真由さんが「作り手」という集合に帰属することを彼が認識できるのではないか――。自分が放った銃弾が真由さんに当たっていると気付くまでにはかなり時間がかかるとは思いますが、少しずつ前進していくことはできると思います。ただし、彼が真由さんの意図に全く気付かないという可能性もあります。

自分の気持ちを伝える

 もしも彼が1ミリも変わる空気がない場合は、ダメ出しが不快であることをストレートに伝えることをお勧めします。その際に気を付けたいのは、真由さんが相談文で書いているような「作り手側の事情」をあまり持ち込まないようにすることです。また、目的はダメ出しをやめてもらうことなのですから、彼の稚拙な意見を否定するようなことも、あまり言わないほうがいいと思います。そうではなく、「あなたのダメ出しを聞いていると、悲しい気持ちになる」「ダメ出しをしているときのあなたは怖い」という、自分の気持ちの動きを伝えるようにしてはどうでしょうか。

ダメ出しという暴力

 先ほどから銃弾のたとえを出していますが、好き嫌いを表明する感想とは異なり、ダメ出しなどの「批判」は必ず暴力性を伴います。したがってそれに対して「悲しい」「怖い」といった気持ちになるのは、ごく普通の反応といえます。彼の暴力的な批判に、真由さんが我慢する必要はありません。「気になること」として自分の中に出てきた違和感や嫌悪感を、やり過ごさずに言語化して彼に伝えることをお勧めします。