業務外の対応は「緊急時以外」は極力避ける

 新卒時は投資銀行でキャリアをスタートした松本さん。入社3年目に社用携帯を持たされ、オン・オフ関係なく業務メールをチェックできるようになった時はうれしかったと振り返ります。

 「それがいまやパソコンは社内に置いて帰るし、休日にメールチェックもしません。休日にメールを読むと週明けに対応するのを忘れてしまうこともあるので、あえて未読のまま残しておきます。人生には『がむしゃらに働く時期』があると思いますが、今はオフ時間に仕事の連絡が入ると、ノイズのように感じてしまうんです。自分の中のプライオリティーが仕事から余暇時間へと移り、ライフステージが変化してきたのだと思います」(松本さん)

 伊藤さんは店舗対応もあるので、「ビールサーバーが故障した」といった連絡が土日に入ることもあるそうです。

 「土日でも緊急性の高い電話には対応するなど、何かしらのワンアクションは取ります。そのほうが先方にも安心してもらえます。それ以外の急ぎでないものは週明けに対応し、『土日は休んでいる』と認識してもらうように努めています。また、平日でも予定がある日は『19時以降は電話に出ない』と決め、周囲にも翌朝一番に折り返すよう頼むことも。エンドレスに対応するのではなく、自分の中でも線引きが必要ですね」(伊藤さん)

5.早帰りはオフ時間を充実させるためのものである

退社後や休日にやりたいことができる状態をつくる

 伊藤さんは年に一度行われるヤッホーブルーイングの野外イベント「超宴」のオープニングでバレエを踊ったことのある実力の持ち主。

 「週に1回はバレエ教室に通い、1回2時間ほどのレッスンを受けています。発表会は2年に1回あるのですが、今年はちょっと練習不足かも……舞台に立つからには自己満足ではなく、ちゃんと踊りたいので、今回は見送るかもしれません。バレエは『本気過ぎる趣味』なので、最近はもうちょっと気楽に楽しめる趣味を模索中。一芸として披露できるトランペットなんていいな、と思っています。

 私はオフ時間に予定を入れておかないと、いつまでも完璧を求めて仕事をしてしまうんです。だからバレエや飲み会などの予定を入れて、『今日はレッスンだから』『大事な飲み会があるから』と周囲にも宣言し、気持ちよく送り出してもらえるようにしています。もともとお酒が好きで、仕事も趣味の延長みたいで楽しい。でも、オン・オフの区別はきちんとつけて、さらに人生を楽しみたいと思っています」(伊藤さん)

 17時30分に退社し、ゆっくり夕食や入浴などを済ませても「20時30分からは自由時間」という松本さんは、

 「眠くなるまで本を読んだり、学生時代に専攻していて、最近改めて興味を持ち始めた社会学について学び直したりしています。仕事には直接関係ないかもしれませんが、『一人の人間として知らないこと』が減っていくのは楽しいです。

 もともと私は『2020年までには東京を出よう』と決めていて、昨秋に夫と長野に移住しました。今は仕事だけの人生ではなく、自分の時間を大事にして、主体性を持って過ごしたい。もっと言ってしまえば『仕事は人生の暇潰し』でもいいと思っています。ただ、一方で『モチベーションを高く保ちながら働く』ことも大事にしたいので、仕事と余暇のバランスを上手に取っていきたいですね」(松本さん)

文/三浦香代子 写真/清水知恵子