イノベーションとエンゲージメント、どちらも女性が鍵に

 優秀な女性たちがどんどんリーダーになってほしい。意思決定層に女性たちが増えてほしい。そして組織をよりよい方向に変革してほしいと思います。

 女性たちには二つの意味で期待しています。一つは、組織にイノベーションを創出するキーパーソンとして。意思決定層に同じような人たちばかり――例えば、男性・日本人・50代以上・専業主婦あり――がいるモノカルチャーな組織ではイノベーションが生まれにくいといわれます。しかし、そこに、女性たちが参画して視点が多様になることで、イノベーションが創出しやすくなります。さらに、リスク管理能力や変化に適応する能力も向上するといわれています。それはそうですよね。男性たちの関心事がおおむね似ており同じ方向にしかアンテナが向かなければ、キャッチするリスク要因、変動要因も限りがあります。しかし、そこに女性が加わればもっと違う角度から情報を入手し、さまざまな要因を検討することが可能になります。女性役員が一人以上いる企業は経営破たん確率を20%減らせるという調査結果もあるのです。

 もう一つは、組織のエンゲージメントを高める存在として、です。17年に発表されたある調査が日本中の経営陣に衝撃を与えました。米ギャラップ社が発表したエンゲージメント(仕事の熱意度)調査です。これによると、日本には熱意あふれる社員が6%しかおらず、エンゲージメントの国際比較では139カ国中132位の最下位クラスだったのです(日経電子版17年5月26日)。組織のエンゲージメントによって組織成果が左右されることは容易にイメージできますよね。日本ではそれがとても低いのです。その報道を見た経営トップが「ウチのエンゲージメントはどうなっている!」と慌てたという話がいろいろな方面から聞こえてきました。さて、その理由を、米ギャラップ社では、コマンド&コントロール(指令と管理)によるマネジメントは若いミレニアル世代には効果的ではないためと分析し、上司のマインドセットを変える必要があるとしています。

自分らしさを生かしたリーダーになればいい

 「強いリーダーシップが取れない」「自分の上司のようになれない」と女性は悩みがちですが、上記の分析を見ると、従来のリーダー像に縛られる必要はないと思えるのではないでしょうか。「オレについてこい」式の支配型・管理型マネジメントは、昭和の時代は効果がありましたが、平成も終わろうとしている現在では、部下と一緒になって考えて部下が力を発揮できるように支える、共感型・支援型のマネジメントのほうがいいらしいのです。それならば女性にもできるのではないでしょうか。いやむしろ女性のほうが男性よりも得意なのではないでしょうか(もちろん個人差はありますが)。

 日経ウーマンオンライン内の連載「ウーマン・エグゼクティブ・カウンシル」には、経営トップや取締役など女性エグゼクティブのインタビューを掲載しています。彼女たちのリーダーシップのあり方や組織マネジメント方法、そしてファッションスタイルは人それぞれです。実に多様です。しかし、共通項があります。「果たして私でいいのか」「自分が務まるのか」と不安や葛藤を抱えながらも、それを乗り越えて「私は私でいい」「自分らしくいることが強み」と思うようになったと多くの人が語っています。彼女たちは決して遠い雲の上の人ではなく、真摯に仕事をする皆さんの延長線上にあるロールモデルだと思います。魅力的な女性リーダーたちの姿、そして言葉をぜひご覧いただきたいと思います。「自分らしさを生かしたリーダーであればいい」「自分らしいリーダー像をつくればいい」ということが分かっていただけるのではないかと思います。

 女性がリーダーになればすべてのことが解決するとは思いませんが、今年起こった組織のさまざまな不祥事やセクハラ・パワハラなどのハラスメント案件を振り返ると、もし、女性がトップにいたら、または意思決定層にもっと女性が多かったら、このような事態にならなかったのでは、避けられたのではと思います。

 リーダーになり得る素晴らしい女性はたくさんいると思います。あとは「自分はできる」という自分への信頼と、「失敗してもいい、そこから学べばいい」という気持ちでチャレンジする勇気を持てるかどうかだと思います。

 組織をリードし、自分の人生をリードし、世の中にいいインパクトを与えませんか?

 誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、自らが変化を起こす「チェンジメーカー」になりませんか? ぜひ、ご一緒に歩みましょう。女性たちの力もあなたの人生の可能性もきっと無限大です。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。皆様のご活躍とご多幸をお祈りします。

女性の力が、より発揮される未来になりますように (C)PIXTA
女性の力が、より発揮される未来になりますように (C)PIXTA

文/麓幸子 写真/PIXTA