際限のないがんばりを強いる職場が多い

 また、この問題に関連して、「月100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない」と長谷川秀夫武蔵野大学教授がSNSに投稿、その後批判が殺到し、同大学学長が謝罪するという事態がありました。その後、筆者も偶然乗車したタクシードライバーの男性(推定で60代、前職は大手企業の人事部長と言っていました)から同じような主旨の言葉を聞き、唖然とした経験があります。

 このように、根性、気力で仕事は完結すべきもの、そうでないのは本人がダメだというこのガンバリズムを賞賛する中高年の男性が多い。そこに成功体験を持ち、部下にも強いる管理職がまだまだ企業にたくさんいるのではないでしょうか。

 電通は、1991年にも入社2年目の大嶋一郎さんがうつ病を発症し過労自殺で亡くなるという事件がありました。高橋さんと同じ24歳でした。この事件では、2000年3月に最高裁判決で会社側に全面的な損害賠償責任があると認定されました。その際、「殺されても放すな」など文言のある鬼十則と呼ばれる行動規範が問題となりました。

 「そこにある過度な精神主義が、今回も改善されなかったのではないか」と川人弁護士は言います。

 「日本企業は、この鬼十則に見られるように、これまで、際限のない『がんばり』を働く人たちに強いてきました。健康よりも仕事に高い価値を置く企業風土がありました。それを改めないといけません。高橋さんの母・幸美さんが訴えたように、社会全体で『命より大事な仕事はない』という価値観を共有することが大切です」。

 このような中で、私たち働く女性はどうしたらいいのでしょうか。