意見やアイデアが形になることで、モチベーションが上がり組織が元気に

――多くの日本企業では、社員のモチベーションを上げることに非常に苦労していますが、フルラ ジャパンは違うのですね。

倉田:自分たちの意見やアイデアが実際に形になっていくので、「私たちも経営に参加しているんだ」という実感が得られ、それが充実感やモチベーションにつながっているのだと思います。相乗効果により、さらにいろんなアイデアが出てきて組織が活性化する。私は、みんなの意見を拾い上げて形にしているだけです。

倉田氏の「人を重視する経営」が、成長のカギを握っている
倉田氏の「人を重視する経営」が、成長のカギを握っている

――フルラは、プロダクトのスピードも非常に早く、日本独自の企画商品も多いと聞きます。

倉田:日本人はファッション感度が高く、自分だけのモノを持ちたいというカスタマイズに対するニーズは世界一です。そこで、ブランドの定番シリーズのメトロポリス(METROPOLIS)から、カスタマイズコレクションが作れないか、イタリア本社に提案を行いました。通常、商品化には1年半くらいの時間がかかるのですが、提案からわずか9カ月で店頭に並びました。これは、どのブランドを見渡しても類を見ないスピードです。イタリア本社が我々を信頼してくれているからこそ、実現できたことです。

――「通常ならありえないこと」が、可能になった理由は何でしょうか?

倉田:グローバルの売り上げの23%を占める日本は、フルラにとって重要な市場です。ですから、日本チームが提案することは、ブランドにとってメリットのあることだと信頼し、理解してくれているのです。また、イタリアの本社スタッフはいったん同意をするとフットワークが非常に軽く、日本の倍以上ものスピードで仕上げてしまう。特に、クリエーティビティーの高さや物事の集中力、瞬発力には感心させられますね。

――多くの女性にとって、出産や育児はキャリアの壁になっています。時短の期間を大幅に延長したことで、どのような効果が生まれましたか。

倉田:それぞれ自分たちのペースで家庭と仕事を両立してもらいたいという思いから、時短の期間を大幅に延長しました。「復帰の後押しになった」といううれしい声も上がっています。

――とはいえ、シフト勤務の職場の場合、時短勤務の人が増えると、別のスタッフに負担がかかってあつれきを生むといったケースも多く聞きますが。

倉田:人によってそれぞれライフスタイルが違うため、シフトに関しては、フレキシブルに店単位で決めてもらっています。ただし、長期の有給休暇に関しては、会社が介入し、対策を取っています。仮に、1カ月前に休暇を申請した場合、その間は短期の派遣社員をアサインするなどの対応を行います。これにより、長期の有給休暇取得率が2倍以上に増えたんです。

――そうした働きやすさを反映してか、フルラの「従業員満足度調査」の回答率は100%に近いそうですね。

倉田:2015年に初めて実施したのですが、「どんな声でもいいので、みんなの声を聞かせて」と一人ひとりに直接メールをしました。その結果、一般的に優良企業とされる7~8割の回答率を大きく超える99.3%の回答率に。2017年は、短期の派遣職員の方も自発的に答えてくれたため、100%を超える回答率を達成しています。自由回答欄では、会社が改善できるアイデアを遠慮なく教えてほしいと伝えたところ、200以上ものアイデアが集まりました。現在、反映できるものから着手しているところです。例えば、売り上げを達成した店舗には、スタッフ全員の焼肉代を払うという「ミートフェスティバル」など、大小さまざまな改善を取り入れています。