女性活躍が進んでいる企業の共通点とは
女性活躍を推進するために、評価制度で工夫している点を挙げてもらった。
「KDDIでは、マネジメント層には女性活躍推進を含む人財育成・指導によって評価の加点をしており、短時間勤務者の管理職昇進者も増えています」と間瀬室長。日産自動車の小林室長は、「育休、産休に入る社員にも、他の社員と同様に昇進試験を受けるチャンスを与えることを明文化し、短時間勤務者もフルタイムの社員と同様に業務の内容で評価しています」と話す。
最後に、モデレータの麓が両社の取り組みについてまとめた。
「両社とも経営の意志決定層に女性を増やすことを明確な目的とし、そのために女性人材のパイプラインを太くする方法に注力しています。また、女性登用の数値目標を持ってPDCAを回し、女性たちのネットワークを構築してロールモデルの共有も行っています」(麓)。
「さらに、女性を人材育成できる男性管理職を増やし、男性の働き方も変えるなど、男性をターゲットとする施策も忘れていません。そして、女性のキャリア開発と働き方改革を同時に進めている。これが両社に共通するポイントです」と麓は総括し、女性活躍推進の戦略と実態がつぶさに語られたパネルディスカッションは幕を閉じた。
<最後に>
KDDIと日産自動車は4年連続で「なでしこ銘柄」に選定されています。なでしこ銘柄は経済産業省と東京証券取引所で共同企画として実施されるもので、平成24年度から始まりました。4年連続ということは最初から選ばれ続けているということで、両社含め3社しかありません。なでしこ銘柄は女性活躍とROEなど財務指標でスクーリングされますので、こちらに選定される企業というのは、女性活躍と企業経営が好ましい状態であることを意味します。
このパネルディスカッションで明らかになった両社の共通項は4つあります。(1)トップが女性活躍は経営戦略であることを明言していること、(2)女性活躍の数値目標を掲げてPDCAを回していること、(3)女性のキャリア開発施策を実施していること、(4)女性リーダー育成に対し、管理職がコミットしていること―です。特に(3)と(4)は重要です。女性活躍というと両立支援制度の拡充に注力し、(3)と(4)がおざなりになることが散見されるからです。両社を含め女性活躍先進企業20社の戦略と施策の詳細は著書『女性活躍の教科書』にまとめています。ご参考にしていただければと思います。(麓幸子=日経BPヒット総合研究所長)
取材・文/芦部洋子 写真/辺見信也
(2016年7月14日にサイト「日経BPネット」のコラム・麓幸子の「ダイバーシティ&働き方改革最前線」に掲載された記事を転載しています)