日産自動車はキャリア開発会議で人材を育成

 次に、日産自動車の取り組みについて、小林室長が説明した。「ダイバーシティに取り組んだのは、1999年のルノーとの資本提携以降。ダイバーシティ ディベロップメント オフィスができたのは2004年です。日産のダイバーシティは、あくまでもビジネスに生かすための施策という位置づけです。企業文化や国の文化、国籍が違う人たちがともに働く方法として、一人ひとりがダイバーシティのマインドセットを持つよう取り組んできました」。

日産自動車ダイバーシティ ディベロップメント オフィス室長 小林千恵氏
日産自動車ダイバーシティ ディベロップメント オフィス室長 小林千恵氏
1991年入社。海外営業部門にて、メキシコ事業を担当。ルノーとアライアンスを締結した直後の2000年より3年間、南米進出プロジェクトに携わり、ブラジル事業立ち上げに従事。中南米カリブ地域の販売促進を担当を経て、2005年二人の子供を連れてブラジルの子会社へ出向し、事業計画・商品企画を担当。帰国し、グローバルセールス部門にてグローバル輸出企画に従事した後、 2014年4月より現職

 ダイバーシティを経営戦略と位置づけ、経営層が継続して推進している。数値目標を掲げ、商品企画、生産、販売まですべてにダイバーシティの視点を入れるよう、プロセスを組んできた。

 「商品開発としては、赤ちゃんを抱いたまま車に乗れるよう、ドアが広く開く設計にしたり、大型車だけに搭載していたアラウンドビューモニターを小型車にも搭載して駐車しやすくし、女性に大変喜ばれています」と小林室長。

 日産自動車の女性キャリア育成で特徴的なのは、キャリア開発会議だ。育成を目指す女性社員の直属の上司、部長、人事、キャリアアドバイザーの4者が、その女性の育成方法や課題に関して、年2回会議を持つ。

 「4者が集まり、ひとりの女性のキャリアを真剣に考える機会があることは、非常に重要だと実感しています。さらに、女性には出産などのライフイベントがあるので、両立しながら活躍できる方法をソフトとハード面から啓蒙したり、時短勤務する部下を持つマネージャを集め、育成方法を指導しています」(小林室長)。

 ダイバーシティオフィスができた2004年当時は女性管理職が1.6%だったが、今年4月には9.1%まで増えた。部長層は今年4月で62人。生産、開発、サプライチェーン、購買などの部門にも女性の部長、課長が増えた。「とはいえ、パイプラインはまだ細い。採用において女性比率のガイドラインを設けていることもあり、女性の比率は13%までに増えたが、今後は女性の部長、課長も13%を目指していきたい」と小林室長は目標を語った。