増える在宅での看取り。そのとき訪問看護師が要となる

――内閣府の調査では、国民の半分以上は「自宅で最期を迎えたい」と思っているものの、自宅で亡くなる人は1割程度です。今後、地域福祉、在宅ケアにおける訪問看護の重要性は、ますます増していくと思われますが、いかがでしょうか?

菅原:間違いなく今後は、家での看取りが多くなっていくと思います。病院で死を迎えられるのは、一部のお金持ちだけになっていくかもしれません。本人にとっても、命の大切さをつないでいくという意味でも、本来、在宅で看取りができるほうがいいはずです。「看取り」は、今後、訪問看護ステーションの要になっていくのではないでしょうか。そのためにはやはり訪問看護ステーションを増やす必要があります。私の願いでもある「日本中に星降るほどの訪問看護ステーションを!」を実現したいですね。

――菅原さんが描いていらっしゃる「日本中に星降るほどの訪問看護ステーション」の未来図は、どのようなものなのでしょうか。

菅原:できれば、「小学校区にひとつの訪問看護ステーション」が理想です。以前、なぜ訪問看護ステーションがなかなか増えないのだろうと思って調べたところ、毎年300カ所の事業所が増えているのに、同じ数だけ閉じていることを知りました。そして、そのうちの半数が人員基準違反で閉鎖している。つまり、人員基準である2.5人の看護師を確保することが経営のネックになっているんですね。それができないと、事業所は閉鎖されてしまう。ですが、お客さんがいない間も、常に2.5人の看護師を確保することは、金銭的にかなり厳しく、苦労している事業所が多いのが実情です。

 ですから、最初から2.5人の基準を課すのではなく、抱えているお客さんの数に合わせながら、段階を踏んで看護師の数を増やしていけるようなシステムに変更してほしいと、以前から訴え続けているところです。

――どうすれば訪問看護ステーションは増えると思いますか。

菅原:近年、訪問看護のコンサル会社から「どうすればうまく経営できるのか?」と聞かれることが増えましたが、実際に、現場のプロである看護師をまとめ、従えるには、医療の知識やビジョンが必須です。ですが、実際は、数字の理論だけで経営を行い、失敗するケースが後を絶ちません。ですから私は、看護師自身が経営感覚を身に着けて、訪問看護ステーションを開業するのが一番いいと思い、開業看護師育成に注力してきました。

 今、描いているのは、看護師が1人で訪問看護ステーションを開業し、「街の駐在さん」的な存在になること。「そこに居るだけで安心感を与えられる」という意味では、看護師も駐在さんのようなものです。地域の人々が困った時に、気軽に相談できるという場所があるだけで、安心して過ごすことのできる街へと変わっていくはずです。