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今村久美「志を果たしに」故郷に帰る人の流れをつくる

2016年7月27日

「地方は何もない、東京は素晴らしい」は間違いだった

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2016年4月に施行された女性活躍推進法。国家の成長戦略の中枢に女性の活躍が置かれているが、それは地方でも同じこと。女性の力を生かすことが地方創生の鍵となる。この連載では、さまざまな活動で地方を元気にしている女性たちを毎回1人取り上げてロングインタビューで紹介する。
(2016年3月31日にサイト「新・公民連携最前線 」のコラム「麓幸子の『地方を変える女性に会いに行く!』」に掲載された記事を転載しています)
東日本大震災の被災地など全国各地で中高校生を対象に学習プログラムを展開しているNPO法人カタリバ代表理事の今村久美さん。今村さんの活動には、若い人の流出という深刻な問題に対するひとつの答えがある。童謡の歌詞のように、かつて故郷は「志を果たして」帰るところだったが、今村さんの活動の先には「志を果たしに」故郷に帰る新たな兆しが見えている。

今村久美(いまむら・くみ)
1979年岐阜県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2001年在学中に高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を始め、06年に法人格を取得。11年東日本大震災を受け、被災地域の放課後学校「コラボ・スクール」を宮城県女川町と岩手県大槌町に開校。15年、中高生向けキャリア教育拠点として東京都文京区に「b-lab」、島根県雲南市に「おんせんキャンパス」を立ち上げる。08年日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤ―」受賞。09年内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。現在、中央教育審議会・教育課程企画特別部会委員、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 文化・教育委員会委員。写真は東京・高円寺にあるNPO法人カタリバのオフィスで。ここでは若者38人が働く

被災地で子どもたちの放課後の居場所づくりをする

――高校生のためのキャリア学習プログラムを展開していた今村さんが、東日本大震災を受け、11年より被災地域で放課後学校「コラボ・スクール」を開始しました。そのきっかけはなんだったんですか。

今村:東日本大震災から1カ月後に被災地を訪れました。「カタリバ」の活動で培ったノウハウや人脈もありましたので、特に子どもたちのために何かできることはないか、現地のニーズを知りたいと思ったのです。

 宮城県・女川町で避難所となっていた校舎の中で生活し、地元の人と寝食をともにしながら、話を聞いて回りました。地域の人々の思いや変化する日常を肌身で感じながら、全壊した町の中でどのような支援が本当に必要とされているのか、知りたかったのです。

――すでに様々な支援が行われていたと思いますが、現地ではどう受け取られていたのでしょうか。

今村:県外からボランティアの人たちが来て、炊き出しやイベントといった単発の支援を行って帰っていくというのが多かったんですね。震災直後にはそれも大切な支援だったと思うのですが、震災から1カ月が過ぎ、人々が避難所から仮設住宅へ移り始め、営業を再開する商店も出始めるなかで、今、本当に必要とされているのは、地域の人が“もともとあった日常”を取り戻すことなのではないかと感じました。

――地域の人に寄り添った長期的な支援だと。

今村:特に避難所や仮設住宅で暮らす子どもたちの多くは、落ち着いて勉強できる場所がありませんでした。避難所は夜9時に消灯するので夜、勉強ができませんし、女川町では学習塾も9割が流されていました。子どもたちは、学校から帰って勉強するという当たり前の日常を失っていたんですね。そんな子どもたちが安心して過ごせる“放課後の居場所”をつくりたいと思って立ち上げたのが、「コラボ・スクール」です。

――立ち上げまでどのように進めたのですか?

今村:私は避難所生活を送りながら、教育委員会や学校、住民の方々と話し合いを重ねました。私たちの団体には学生ボランティアとして活躍してくれている人が多く参加していますので、最初は学習指導役に学生を短期で派遣することも考えたんですが、現地に滞在して、地域の人たち自身が大きなパワーを持っていることに気付かされました。

 自分の塾が流されて、経済的基盤を失ったのにもかかわらず、塾の先生たちが毎日のように避難所に来て子どもに無償で勉強を教えていたんですね。こうした地域の人たち自身の活動を大切にして、同じ思いを持った人たちと“コラボ”し、子どもたちを応援したいと思いました。

――それで、「コラボ・スクール」なのですね。

今村:学校、保護者、地域外の人、学生など、いろいろな人たちとの連携の意味を込めました。

 女川町で統廃合のため、利用されてなくなった学校を借り、地元で仕事を失ってしまった学習塾経営者や塾講師13人に協力を仰いで、11年7月にコラボ・スクール「女川向学館」がオープンしました。女川町の小中学生は約510人ですが、半数近い230人が通ってきてくれました。同年11月には岩手県・大槌町でコラボ・スクール2校目の「大槌臨学舎」を開設しました。

 現在も、女川町と大槌町で合わせて427人(2014年度、夏期・冬期講習、出張授業などを含む)が通っています。毎年、両スクールの中学3年生の95%以上が第一志望の高校に合格しています。

 実はこのコラボ・スクールとのかかわりで、私自身の価値観も大きく変容したのです。

女川向学館の授業風景(写真提供:カタリバ)
大槌臨学舎の生徒が集合(写真提供:カタリバ)

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麓幸子
麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研フェロー。1984年筑波大学卒業、同年日経BP入社。88年日経ウーマンの創刊メンバー。2006年日経ウーマン編集長。15年日経BP総合研究所副所長。17年日経BP総研マーケティング戦略研究所長。18年現職。法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁などの有識者委員を歴任。筑波大学非常勤講師。著書は「女性活躍の教科書」「仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣」など。
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