相手の考えていることは分からないのに、自分の考えていることは分かってほしいと思っていることってありますよね。それって単なるエゴではないでしょうか? 正直にはっきりと伝えることが近道となることはよくあります

 映画ライターのゆうせいです。

 仕事やプライベートがうまくいかないとき、誰しも落ち込みますし、奇跡でも起きないかと妄想することはありますよね。私も中学生のときには、通学中にメガネ女子と曲がり角でぶつかる出会いが本当にあると信じていましたから。

 今回ご紹介する「植物図鑑」は、まさにそんな幸せな妄想が本当になったような作品です。こんな幸せあるわけないじゃん……と思いつつも、やっぱり憧れるし、いつか自分の身にも起こり得るような気になるし、最後には全力で応援したくなる内容です。

 でも、幸せって、勝手にずっと続くわけではありませんよね。そのあたりの怖さも本作は教えてくれます。

【ストーリー】
仕事もプライベートも行き詰まっているOLの「さやか」は、マンションの前で行き倒れていた青年、「樹(いつき)」と出会う。半年間という期限付きでさやかの家で暮らすことになった樹は、料理上手で野草に詳しく、さやかの知らなかった世界を優しく教えてくれる。さやかは次第に樹にひかれていくが……。

幸せのコップからあふれないギリギリの量をずっと継ぎ足してくれる

 あらすじにもありますが、本作は突然の出会いから始まります。嘘みたいな出会いに、いくら映画でもそんなのって……なんてツッコミを入れている間にどんどん引き込まれます。

 主人公の樹(いつき)の優しさに、油断したら泣いてしまいそうなほど胸がいっぱいになるのです。

 例えるならば、幸せのコップに、あふれないギリギリの量の水をずっと継ぎ足してくれる感じです。コップに入った水も時間とともに少しずつ蒸発しますよね。すると、またあふれないギリギリの量を継ぎ足してくれて、常に幸せを感じさせてくれる感じです。

 あまりの幸せに、とにかくこのまま話が進みますように、無事に終わりますようにと祈ってしまいそうなほどドキドキしますし、むしろホラー以上にハラハラします。

 でも、これで終わってしまっては映画としては物足りないわけで、やっぱり訪れてしまうのです。

 ラブストーリーにおいては切っても切れない「擦れ違い」ってやつが……。