チームとして一つのことを成し遂げるために、何をすべきか考える

小山 宝塚時代にこれを得たから今があるんだ、と気づくことはありますか?

 宝塚にいたからよかったと思えることはいっぱいあります。私、もともと芸事に興味がなく、人前で何かをするタイプじゃなかったんですね。宝塚を受けたいと言ったとき、両親がびっくりしたぐらい。一人っ子で、物事は自分中心に回っているとずっと思っていたので、人や人とのコミュニケーションにあまり興味がなかった。宝塚に入ってまず人をすごく見るようになって、自分が人前で何かするのを楽しいと思うタイプだと気づいたのが、大きかったですね。芝居も楽しいし、人もどんどん好きになって、お話ししたいって。新しい人と出会ったら、お食事に行ってもっとその人を知りたいと思うようになったのが、大きく変わったことでした。

小山 生まれつき、そんな性格かと思ってた。

 どこかにはあったんでしょうね。それが楽しいと思えた時点で、「私、舞台向きだったんだ」って(笑)。それはよかったと思いますね。

小山 宝塚で目覚めたものが、今すごく咲いているわけだ。

 咲いているといいし、もっともっと咲かせたい。宝塚という枠組みが外れた今、人との出会いも表現の幅も無限大に広がってきたと思うので、もっとアンテナを張ってどんどんキャッチしていきたいと思っています。

小山 会場の皆さんの中にも、引っ込み思案でなかなか人とおしゃべりできないという方がいらっしゃると思うんだけど、相手に飛び込んでいくにはどうしたらいい?

 頑張って声を出してみるとか、声をかけてみるとかいろいろあると思うんですけど、まずは相手の言っていることをちゃんと聞くところから、始めたらいいんじゃないでしょうか。そうしたら、それに対して自分が何を感じているかとか、自分はこう思うとか、いろいろ派生してくると思うので。

小山 宝塚の二番手だったときとトップスターのときに感じたことは、今に生きている?

 すごく生きていますね。自分のことだけでなく、カンパニーというものをしっかり考えるようになりました。どうしたらみんなの気持ちを一つにして、モチベーション高く一つのことを成し遂げられるのか。これは舞台だけでなくて、会社でもそうだと思うんです。

立ち見も出るほどの満員の会場。気心の知れたお2人のトークに、常に笑いが起きる
立ち見も出るほどの満員の会場。気心の知れたお2人のトークに、常に笑いが起きる

 私は、二、三番手の頃から、“組子”をどういうふうにもっていけば、トップを中心に一つになって舞台ができるか、ということを考え始めたんです。その延長線上で、トップになったときには、全部自分がやるのではなく周りに任せて、みんなが躊躇なく力を発揮できる空気をつくろうと思ったんですね。

 だから、私から具体的にこうしようと言うのではなく、みんなが自主的にそれを出すことができるよう、とにかく私にぶつけてきてくれ、ということを言っていました。みんなが心も体も健康であることと明るい空気、今この仕事ができる喜びを感じてもらうことを大切にしていたので。

小山 皆さんの職場でこういう上司がいたら、いいですよねえ。

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 楽しいお話が尽きないまま、セッションは終了。前向きで自然体な壮さんのお話に、参加者も刺激を受けられたのではないでしょうか。秋に『扉の向こう側』などの舞台を控える壮さん。今後の活躍にも目が離せません。

文/山本真由美 写真/水野浩志